- 出演者
- 片山千恵子 榊原郁恵 本田望結 宇治原史規
労働者の高齢化や人手不足が表面化し生活が変わる可能性が出てきている。2024年問題について考える。また能登半島地震の現場では解説委員が徹底取材。
テーマは「2024年問題 くらしはどうなる?」。4月から運輸、建設、医療の分野で労働時間が大きく制限される。2024年問題では荷物が届かない、道路などの復旧が遅れるといったことが心配されている。働き方改革は先に始まっていたが運輸、建設、医療の3つは5年間猶予をもらっていた。運輸は年960時間、建設は年720時間、医療は年960時間が上限になる。は年960時間は過労死ライン。運輸、建設の月間総労働時間は全産業平均より2割ほど長い。2024年度から始まる働き方改革で、2019年度と比較して14%の荷物が運べなくなるおそれがあると試算されている。対策をしなければ2030年度には34%の荷物が運べなくなるおそれがある。全国のバス路線では約1割で減便・廃止の可能性がある。大阪の富田林でドライバー不足でバス路線が廃止された。医療の分野では、2022年の段階で約21%の勤務医が時間外労働年960時間を超えている。
吉川委員が市立稚内病院を取材。1日800人以上が受診し地域医療の中心となっているが、診療部長の村中さんは医師不足のため労働時間が過剰になっていると話した。働き方改革が進めば休診を増やすしかなくなる。緊急の患者が出ても対応できず、170キロ離れた名寄の病院まで搬送することも珍しくない。札幌や旭川の大学病院からも医師を派遣してもらっているが、働き方改革が進めばいつ引き揚げられるかわからない。
あるアンケートによると働き方改革により改善を期待していると答えたのは32.4%だった。全国医師ユニオンの植山代表は自己研さんや宿日直許可が隠れみのとして労働時間を短く見せかけることに使われる可能性があると指摘している。全国の10万人あたりの医師数を見ると、埼玉が全国一少なかった。国が医師の少ないところに配置するように強制的にやっていく対策も必要との声もある一方、やりたいところでやるべきとの声もある。
1997年には建設業に携わる人は685万人いたが、2023年では483万人となっている。ニーズがある中で200万人減少し、さらに2024年問題が加わる。2040年にメンテナンスが必要な道路のうち78%しか修繕できないという試算もある。災害の場合は特別扱いになる。建物の解体や瓦礫の撤去などは4月から始まる上限規制の適用はないと厚生労働省が説明しているが、長いスパンがかかるものは一部の規制が適用される。
佐藤委員が上信自動車道の建設現場を取材。現場歴1年、21歳の女性がICT建機を扱っていた。GPSなどで位置情報を受信し操縦席のモニターに情報が表示され位置を把握できる。表示される設計データに沿ってアームや先端部分を動かすとデータ通りに地面を削ることができる。モニターを見ながら作業することで難易度が格段に下がった。これまでは操縦者と計測者の2人で行っていた作業が1人でも可能になった上、時間も半分で済むという。測量にもICTを導入し、2人必要だった作業が1人で行えるようになった。一番の問題となるのは高額な費用。この会社では一般建機の約2倍の価格のICT建機を11台購入した。社長はいかに無駄なく使えるように元が取れるかを考え、社員の考え方も変わったと話した。仕事が効率化できたことで完全週休2日制を実現した。
建設業界はこれまで3Kの象徴と言われてきたが、今は給与、希望、休暇、カッコいいの4Kを打ち出している。運送会社でも少ない労働時間でものを多く運ぶためIT化、デジタル化が進んでいる。
トラックドライバーの拘束時間のうち、2割は積み下ろしや荷待ちなど。小口荷物の再配達なども長時間労働に拍車。スーパーマーケットへの食品配送が主だという新木場の運送会社。機械化で手積み・手降ろしを減らすことにより作業時間は5分の1に。道路や倉庫の混み具合をアプリで知らせること、業務報告をデジタル化することなどの施策で取引先からの問い合わせ対応も削減。仕事量や距離、利益などもデータ化する仕組みを導入。こうした施策でドライバーへの賃上げや設備投資など実現。
「2024年問題」を契機に始まった物流業界での働き方改革。業界では中小企業が全体の99%。業界独自の取り組み以上に取引先の理解が一番のカギに。コスト上昇分が価格転嫁されることも少ない。荷主との交渉のためにデータ化を進めた企業も。関係者からは「運賃を上げれば物価が上がる」とし、消費者の意識が重要と指摘。
医療分野では「人手が足りない→仕事がハード→辞めてしまう→余計に人手が少なくなる」という悪循環に。人気があるのは形成外科などの美容系。このため診療科の偏在が起きていて、救急科は最もハードな職場なんだそう。
千葉にある順天堂大学医学部附属浦安病院の高度救命救急センター。年間1万人以上の患者を24時間365日体制で受け入れている。現場で働く救急医の3分の1が女性。育児と両立する女性医師も。仕事はシフト制で二交代制。一人ひとりの要望に応じて勤務体系を変えられるんだそう。医師が変わっても対応できるような体制も整備。専門的な判断は医師が自宅から指示可能に。
- キーワード
- 順天堂大学医学部附属浦安病院
医療現場で起きている働き方改革により、育児と両立する医師も増加。シフト制の導入などにより実現されたもので、患者の情報は誰でも対応できるように医師間で共有されているんだそう。
ここまで紹介してきた各分野での働き方改革。出演者からは「働き方に自由があってもいい」「働き方が選べるのが大事」「やりがいで搾取される構造は考え直さないと」などの声が。解決策としては「技術ある人を必要なところに充てられるような仕組みづくりがポイント」との声。2024年問題で当事者にある物流関係者からは「ドライバー確保のために配送料をもっと払うという選択肢もある」「一度その業種から人が離れると戻すには労力がいる」などと消費者側に変革を求める指摘が。
- キーワード
- NHK解説委員室ホームページ
「NHKスペシャル」の番組宣伝。
「クイズ!丸をつけるだけ」の番組宣伝。
「映像の世紀 バタフライエフェクト」の番組宣伝。
「天然素材NHK」の番組宣伝。
- 過去の放送
-
2023年12月29日(10:05)