2025年7月4日放送 4:15 - 5:00 NHK総合

国際報道
2025 ロシアによるウクライナ人“連れ去り”の実態

出演者
辻浩平 藤重博貴 酒井美帆 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像が流れ、出演者が挨拶した。

ニュースラインナップ

「ウクライナ“子ども連れ去り”実態」など、きょう伝えるニュースラインナップを紹介した。

(ニュース)
ベトナムが関税措置で合意

アメリカのトランプ大統領は、関税措置をめぐる交渉でベトナムと合意したとSNSで発表。アメリカはベトナムからの全ての輸入品に対して20%の関税を課すとしている。ベトナム外務省もきょう夕方に会見を開き、報道官が「ベトナムとアメリカの交渉チームは両国首脳の協議を具体化するために協力する」と述べた。トランプ政権は今年4月に相互関税などを発表した際、ベトナムへの関税率を合わせて46%に設定していたため、今回の措置が実現すれば関税率は引き下げられる計算。ただ他の国からベトナムを経由する形でアメリカに輸入される製品については40%の関税を課すとしていて、アメリカのメディアは「中国からベトナムを経由して流入する製品への対策だ」と報じている。

関税措置めぐる各国の交渉は

アメリカと各国の関税措置をめぐる交渉について。イギリスは先月16日に、イギリス市場の開放やアメリカ製品への非関税障壁撤廃などが盛り込まれた協定文書に正式に署名した。中国との交渉では、今年5月に相互に課している追加関税を115%引き下げることで合意した上で、一部の関税について90日間停止し協議を継続している。さらにインドとは今週中にも暫定的な合意に達する見通しだと、イギリスの経済誌「フィナンシャル・タイムズ」が報じている。一方で、当初優先的に交渉が行われると示唆されていた日本は今も合意に達していない。こうした中、トランプ政権の高官は「来週複数の合意が発表されると思っている」と述べる一方、「交渉が実質的に進展していない国については、来週関税率が発表されることになるだろう」と述べている。相互関税の一時停止の期限が迫る中、アメリカの有力紙「ウォールストリート・ジャーナル」は膠着状態が続く日本とアメリカの背景として、アメリカが日本からの自動車の輸出に上限を設けるよう求める可能性に言及していたことを伝えている。

こう着状態…関税措置めぐる日米交渉

アメリカの「ウォールストリート・ジャーナル」はトランプ政権の関税措置をめぐり、5月下旬に行われた日米の閣僚交渉について報じた。この中で関係者の話として、アメリカのラトニック商務長官とUSTR(アメリカ通称代表部)のグリア代表が「日米が早期に合意できない場合、より厳しい措置に移行する可能性がある」と警告したうえで、「日本からアメリカに輸出できる自動車の台数に上限を設けるよう求める可能性」に言及したとしている。これに対し日本側は、当初からトランプ政権が自動車への25%の追加関税を維持する場合「合意できない」という考えを伝えていて、膠着状態が続いているとしている。記事では「日本との対立は、期限までに各国と合意することの難しさを示している」と伝えている。

辻’s Angle「米 ベトナム 関税合意で影響は」

トランプ大統領は、ベトナムとの関税交渉で「合意に至った」と明らかにした。早速市場が反応している。ベトナムに工場を持ち、アメリカに輸出しているナイキやデッカーズ、ルルレモンなどの企業の株価が上がった。トランプ政権は今年4月にベトナムに46%の関税をかけるとしていた。それが今回の合意で20%に引き下がることから、とりあえず市場からは歓迎された形。ただこうした関税は、今年はじめの段階ではなかったことを忘れてはならない。今回の合意のもう1つのポイントは、関税の割合が2つ設けられていること。ベトナム製品に対しては20%だが、ベトナムを経由する製品に対しては40%という高い関税がかけられている。中国を念頭にした動きとみられている。ベトナムからアメリカへの輸出額の推移(アメリカ国勢調査局/ブルームバーグ)を見ると、2002年から少しずつ増えているが2018、19年から急激に増えているのがわかる。2018年には、トランプ1次政権で中国に高い関税がかかっている。このため関税を避けるために企業は中国からベトナムに拠点を移し、そこからアメリカに輸出を続けたとみられている。合意内容の詳細はまだわからないが、抜け穴をどう封じるのかというのも注目ポイント。ベトナムとのディールを成果として強調するトランプ大統領は、他の国にも合意に応じるよう日本を含めて圧力をかけている。しかし今は停止されている関税が仮に発動されれば、アメリカにとっても負担になるとの報告書「都市部の中規模企業に対する関税のリスク」をJPモルガン・チェースの研究機関が発表した。調査の対象となった中規模の企業は、アメリカの雇用の3分の1を占める重要な存在。大企業ほどの体力がなく、コストを吸収したり輸出先と交渉できない可能性がある。報告書はトランプ関税が発動された場合、アメリカの中規模企業の輸入にかかるコストは最大で1877億ドル(約27兆円)にものぼると指摘した。報告書はさらに別の推計も出している。すでにイギリスや中国などでは、一部関税交渉が合意に至っている。こうした関税が引き下げられた後も、中小企業の輸入にかかるコストは823億ドル(約12兆円)に上る恐れがあるとしている。結論としては「政治家は関税がいかに地元の経済や地方政府の税収にまで影響を与えるかを認識すべきだ」と指摘している。強気な姿勢で各国に圧力をかける背景には、ディールを急がなければアメリカ経済への影響が大きくなることへの懸念もあるのかもしれない。

近い時期に訪日して首脳会談 意欲

就任からあすで1カ月となる韓国のイ・ジェミョン大統領が、国内外の記者を集めてソウルで会見を開いた。この中でイ大統領は、日韓関係について「本当にデリケートな課題が多い」としながらも「北の核・ミサイルに対応する安全保障の問題で協力することがある。民間交流も盛んで、私たちは互いにとても重要な存在だ」などと述べた。その上で両国の首脳が往来する「シャトル外交」について、近い時期に日本を訪問して石破首相と会談することに意欲を示した。

ウクライナ“米国との協議開始”

ウクライナ情勢について。アメリカのトランプ政権は、一部の武器のウクライナへの輸送停止を明らかにした。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、歓迎する意向を示した。一方ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで、「死活的に重要となっている防空システムの供与の継続を確認するなど、アメリカとの協議を始めている」と明らかにした。こうした中、事態を悪化させかねない新たな動きも。ウクライナの情報機関当局者はNHKの取材に対し、「北朝鮮がロシアに向けて今後2万5000人~3万人の兵士を追加で派遣する見通しだ」という分析を示した。またアメリカのCNNは先月4日に撮影された衛星画像の分析として、「去年北朝鮮の兵士輸送に使用された軍用機と同じイリューシン76型輸送機とみられる機体が、北朝鮮の空港で確認された」としている。CNNは「今後追加で派遣される北朝鮮の兵士がロシアが占領を続けるウクライナ領内に派遣され、戦闘に参加する可能性が高い」とするウクライナの情報機関の見方も伝えていて、ウクライナは警戒を強めている。

SPOT LIGHT INTERNATIONAL
ロシアの“連れ去り”生還者に聞く

戦争犯罪とされる、ロシアによるウクライナの子どもの連れ去りについて。ウクライナ政府によると2022年2月にロシアの侵攻が始まって以降、ロシアが占領したウクライナの地域などから連れ去ったとされる子どもの数は1万9546人。ICC(国際刑事裁判所)がプーチン大統領に逮捕状を出す理由ともなった。これに対しロシア側は「戦闘地域の子どもたちを保護しただけで、本人や親の意志に反して違法に連れ去ってはいない」と主張している。一方ウクライナ側は「ロシアが子どもたちにロシア人になることを強制するばかりか、軍事教育を行い兵士として利用しようとしている」と非難している。ウクライナ政府はロシアとの直接協議で子どもたちの返還を要求したが、解決の見通しは立っていない。これまでに帰還できたのは、連れ去られた子どもの1割にも満たないわずか1366人。極めて困難な状況からウクライナに生還した青年に、話を聞くことができた。

先月NHKの取材に応じたブラッド・ルデンコさん(19)はロシアによる“連れ去り”の経験者。ブラッドさんは南部ヘルソン州出身で3年前の10月、自宅に1人でいたところを連れ去られた。当時ヘルソンには反転攻勢を進めるウクライナ軍が迫っていた。ロシアはブラッドさんのような子どもを大勢連れ去ったという。ブラッドさんはロシアが一方的に併合をすすめたクリミアに連れて行った。連れ去られた数ヶ月後ブラッドさんは友人から借りた携帯電話で母タチヤナさんと連絡。タチヤナさんは保護者などによる救出活動を支援するウクライナの団体に相談。ブラッドさんは“連れ去り”から7ヶ月後数カ国を経由して帰国となった。帰国後ブラッドさんは“今も戻れない子どもたちの救出につなげたい”と自らの体験を証言し支援を呼びかけている。

ベルリン支局の田中顕一に聞く。ロシア大統領府のメジンスキー補佐官は先月のウクライナとの直接協議で連れ去られた子どもはいないと述べ否定している。ウクライナ側が子どもの返還を求めたのは支援国であるヨーロッパの同情を買うためだと主張した。アメリカのイェール大学は今年3月、ロシア、ベラルーシの計57施設に組織的に移動させられたウクライナの8400人以上の子どもたちを特定したと発表している。ロシア化を進める狙いがある。視聴者からの声。返還への糸口はある?ロシア側がすんなり応じるとは思えない。居場所の特定にはSNSのアカウントなどが貴重な手がかりとなっているがロシア側が削除させている。支援団体によると、長期にわたって尋問を受け、高齢家族が死亡したケースもある。リスクを恐れためらう人も多いという。

WOW!The World
機内での迷惑行為に罰金!?

ヨーロッパの格安航空・RYANAIRは迷惑行為の乗客におよそ10万円の罰金を課すと発表。RYANAIRは去年、迷惑行為により行き先を変更。原因となった乗客に250万円あまりの損害賠償を求めている。

ポルトガル 猛暑で海岸に「ロール雲」

ポルトガルで撮影された映像を紹介。海岸沿いに現れたのは「ロール雲」。激しい突風を伴い150kmにわたって広がった雲について、専門家は猛暑によるもの。ポルトガルではこの日、気温が46℃にまで上昇したという。

父と息子のマイナーリーグ観戦旅

親子はこれまでに92の球場を訪れ2万4000キロを移動したという。野球への愛、父と子との愛、2人は野球というアメリカの娯楽をシンプルに楽しんでいる。

(ニュース)
米の停戦案 合意至るか不透明

ガザ地区での停戦をめぐってアメリカのトランプ大統領はSNSでイスラエルが60日間の停戦に向けて必要な条件に同意したと投稿。アメリカ政府はハマスが拘束している人質を2回に分けて解放する案を提示したと報じられる。トランプ氏は、ハマスが取り引きに応じることを願っている。さもなければ状況がより悪くなるだけだなどと投稿し、ハマス側も停戦案を受け入れるよう迫る。これに対し、ハマスは声明で、我々の目的は戦闘の完全な終結とイスラエル軍のガザ地区からの徹底を保証する合意に達することだと強調。ハマス壊滅を目指すイスラエルとの間で停戦合意できるかは不透明。イスラエル軍は2日もガザ地区への激しい攻撃を続けていて、地区の保健当局が過去24時間であわせて142人死亡したと発表するなど多くの住民が犠牲となっている。

核開発計画を“1~2年 後退させた”

アメリカのトランプ大統領はイランの核開発の攻撃について、誰も見たことがないほど完全に破壊されたとFOXニュースのインタビューで述べた。IAEA・グロッシ事務局長は、完全な損害ではないとの見方を示すなど様々な評価が出ている。こうしたなか、アメリカ国防総省のパーネル報道官はイラン核施設の損害に関する現時点の分析結果だとして、核開発計画を1~2年後退させた。国防総省の情報部分も各国もそう評価したと述べ、ウラン濃縮に関わる施設や兵器の製造に必要な設備も破壊されているとした。攻撃は成功したと改めて誇示した。イランがIAEAの強力を停止したと発表したことについて、アメリカ国務省のブルース報道官は容認できないと非難。

PFAS汚染 裁判で何が問われたか

PFASとは有機フッ素化合物。1万種類以上の物質が存在。水や油をはじき分解されにくい特性がある。PFASのうち、PFOA、PFOS、PFHxSなど人への有害性が指摘される物質もある。現在、国際的に製造、輸入などが禁止されている。イタリアの裁判では化学品メーカーがPFASを流出させ、地下水を汚染したとして起訴される。1審の判決で元幹部ら11人に拘禁刑判決が言い渡される。そのうち3人は三菱商事から派遣された日本人。拘禁刑16年が2人、拘禁刑11年が1人。一体、裁判で何が問われたのか取材。

イタリア北部ベネト州の一部地域で高い値のPFASが検出され人々の生活に影響が出ている。地元に住むアントニエッタガスパレさんは「何か買うときはとても気を付けている」と話した。汚染源となったのはPFASを製造していたミテーニ社。1996年から2009年まで三菱商事の子会社だった。当時はPFASに関する規制はなく、始めて製造などが禁止されたのは三菱商事が会社を手放した2009年。2013年に水道水の汚染が発覚。ミテーニ社はそれまで約50年にわたりPFASが混入した水を排出。約35万人が影響を受けたと言われている。去年行われた地元の大学の調査によると、高い値が検出された地域はそうでない地域に比べ「心血管疾患」での死者数が想定より12%多かった。ガスパレさんもおととしの血液検査で108ng/ml(PFOA)が検出された。アメリカの学術機関の指針値20ng/mlの約5倍の値で、実際に心血管疾患に悩まされてきたガスパレさんは「汚染の責任者が賠償金を支払ってくれることを願っている。支払われても私たちの健康に起こることからは免れない」と語った。

裁判では”企業が十分な対策を講じていたか”が問われた。検察側は”三菱商事は環境コンサルタント会社から数回PFAS流出の報告を受けていたが十分な対策を取っていなかった”と主張。当時の幹部らに有罪判決が言い渡された。汚染の実態を取材してきたジャーナリスト・ラウラファッツィーニさんは”ミテーニ社や三菱商事などが早くからPFASの有害性を認識していた可能性がある”と指摘した。ミテーニ社の社員がコンサルティング会社に送ったメールなどを含むこれらの指摘に対し、三菱商事は「責任を全うするため必要な対応を行ってきた。具体的な内容はコメントを控える」とした。裁判に関わる弁護士・マッテオチェルーティさんは「予防原則は科学的にその危険性が十分に確認されていない物質についても責任を取らなければならないことをベースにしている。EUの法律に”予防原則”は記されている」と語った。ミテーニ社の元工場労働者の血中に含まれるPFASの濃度は住民たちの平均値の8倍高く、多くの人が関連が疑われる病気で死亡したと指摘されている。元工場労働者のジャンピエトロチェリッタさんは「真実が常に隠されていたことは残念。いつも最後に知らされるのは労働者」と話した。

ヨーロッパで重視されている”予防原則”だが日本の法律には明記されていない。東京都立大学・奥真美教授は「今回の判決は日本企業が自主的な対策をしっかり講じていく方向に後押ししていくのでは」と指摘する。

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