2025年11月7日放送 4:15 - 5:00 NHK総合

国際報道
2025 海外協力隊発足60年〜支援を未来へつなぐには

出演者
辻浩平 藤重博貴 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像が流れ、出演者が挨拶。

ニュースラインナップ

今夜報じるラインナップを紹介。来週開幕するCOP30を前に開催国ブラジルでまもなく首脳急会合が始まる。今回のCOPの焦点について後ほど詳しく取り上げる。

(ニュース)
ニューヨーク新市長 マムダニ氏 トランプ大統領に対じする姿勢強調

アメリカのニューヨーク市長選挙。民主党・ゾーランマムダニが選出された。マムダニ氏は選挙から一夜明けた記者会見で「トランプ大統領が学ぶべきは労働者の生活危機の把握だけでなく、それに対処する成果を上げること」とトランプ大統領を批判した。「この国で最も権力を持つトランプ大統領の行動から最も弱い立場の人を守る」と掲げてきた政策を実行する姿勢を強調した。「全国の共和党員が恐れているのは我々が物価高騰対策を実際に実行に移すこと」と主張した。また、同じ日に行われたバージニア州とニュージャージー州の州知事選でも民主党候補が当選した。この結果を受けて、トランプ大統領は明確な根拠を示さないまま「政府機関の一部閉鎖が共和党にとっての大きな敗因となった」主張、出演したテレビ番組でもマムダニ氏をけん制した。選挙の翌日には反トランプの大規模集会が行われた。集会主催者は「選挙結果は何百万もの人がトランプ大統領に反対し過半数が指示していないことを示した。このエネルギーを広めて大統領の座から降ろさなければならない」と主張。

ガザ地区 物資搬入 “すべての検問所 開放を”

停戦合意発効後もガザ地区の主な検問所7か所のうち支援物資の搬入が可能なのは2か所のみ。ガザ地区では先月10日に発効された停戦合意に基づき、1日あたりトラック600台分の支援物資が搬入される見込み。しかし、WFP(世界食糧計画)の担当者は「搬入する検問所は2か所しか開いていない。北部への食料輸送は依然として困難。北部の検問所の閉鎖が続き大きな障害」と述べ、イスラエルに対して、すべての検問所を解放し搬入拡大を認めるよう求めている。UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)・清田明宏保健局長が都内で会見し子どもの栄養失調の深刻さを指摘した。清田は「これは人災による飢きん。防げたし防げなければいけなかった飢きん」「ヨルダンに借りている倉庫にはガザ用の医薬品が半年分、食料も3ヶ月分ある。ガザから100キロの場所にこれだけのものがある、ぜひ入れてほしい。非常に悔しい思いをしている」と訴えた。

辻’s Angle
イラン外務次官に問う「核合意」

イスラエルとアメリカによるイランへの一方的な空爆から、来週で5カ月が経過。空爆後、自体は悪化の一途をたどっている。イランの核開発を制限する核合意は事実上、崩壊した。IAEA(国際原子力機関)によるイランの核施設の査察も停止している。イランの外交政策の立案にも携わってきたイラン・サイードハティブザデ外務次官にインタビュー。イランとアメリカによる空爆について「国際法は攻撃にさらされている。国際法の原則は危機にひんしている。いま一度、原則に立ち戻る必要がある。国際法の一部だけを尊重することはできない。国際法の原則である領土の保全や国家主権を受け入れるのか。さもなければ国際社会は混乱に陥る」と主張。イランの60%濃縮ウランの貯蔵量は増え続けている。濃縮度90%以上で核兵器への転用が可能。IAEA・グロッシ事務局長は「イランは核兵器を保有しない国で唯一このレベルまで濃縮を進めている」と懸念を示している。これがイスラエルが空爆に踏み切った口実でもある。ハティブザデ外務次官は「高濃縮ウランは全てIAEAの査察も受けている。ウラン濃縮を続けるのはアメリカがイランへの圧力を強めていることへの反発」と説明。イランは「核開発は平和利用」と主張している。しかし、イスラエルやアメリカは核兵器を保有するためと疑っている。

イラン国内の核施設の遠心分離機の数が 急増している。しかし、2016年1月~2018年5月には遠心分離機の数が激減している。2016年1月には核合意(イランは核開発せず、西側は制裁を解除)、2018年5月に第一次トランプ政権が一方的に合意から離脱し制裁を再開した。ハティブザデ外務次官は「核合意にはイランの核の不拡散、欧米によるイランへの制裁の解除という2つの柱があった。2018年にアメリカが核合意から離脱するまでイランは核開発を制限する約束を完全にかつ誠実に履行していた。しかしアメリカは一方的に離脱し制裁解除の約束を一切履行しなかった」と主張。イランとアメリカは仲介国を介して間接協議していたが6月にイスラエルがイランを空爆、交渉は打ち切られた。交渉再開について「イランは交渉の場についていた。それがアメリカとイスラエルの空爆により破壊された。今や戻るべき交渉の場は存在しない。アメリカこそが交渉の場に戻ってくる必要がある」と主張。

(ニュース)
COP30に向け まもなく首脳級会合

気候変動対策を話し合うCOP30が来週ブラジルで開幕する。これに先立ち現地ではまもなく46の国や地域の首脳急会合が始まる。会場のメディアセンターから中継。首脳急会合では熱帯雨林の保全や温室効果ガスの新たな排出削減目標などについて全体的な方針が話し合われる見通し。来年1月にパリ協定から離脱するアメリカのトランプ政権は首脳急会合やCOP本会議に政府高官を派遣しないことを決めている。日本からは首脳急会合に高市総理は参加せず、関係省庁の職員による使節団を派遣する。

どうする AIが消費する大量の電力

COP30の主要なテーマの1つは「AIの持続可能な利用」。AIはデータセンターなどで膨大なデータを処理し運用されているが、その際に消費される大量の電力が問題視されている。消費電力の増加は温室効果ガスの排出拡大にもつながるため、アメリカでは新たなデータセンターの建設計画に反対する運動も起きている。首都・ワシントンに隣接するバージニア州は世界の巨大データセンターの3分の1が集中する世界最大の集積地。大手IT企業などによるデータセンターの建設ラッシュが続き、今後5年で少なくとも2倍に増える見通し。地元環境保護団体事務局長・エレナシュロスバーグは住宅地の近くにもデータセンターが建設されることに苛立ちを隠せない。「持続可能性とは程遠い事態が各地で起きている」と話す。建設ラッシュの背景にあるのは生成AIの利用拡大。従来のネット検索の10倍超の計算処理能力が求められ、多くのサーバーや冷却ファンが必要となる。世界中のデータセンターの消費電力は今後5年間で3倍に膨らむと試算されている。このためトランプ政権は火力発電所の増設を打ち出し、トランプ大統領は「美しくクリーンな石炭資源への不必要な規制を削減する大統領令に署名する」と発表。バージニア州の電力会社は4基のガス火力発電プラント建設を発表。シュロスバーグは「19世紀の化石燃料が21世紀の技術のために使われるなんて時代に逆行している」と主張。

これまでAIの研究をリードしてきたマサチューセッツ工科大学が温室効果ガスの排出量を抑えたAIの開発を進めている。ビジャイガデパリ研究員はAIの情報処理にかかる温室効果ガス排出量を精密に計算、AIが答えを作り出すプロセスに注目した。現在、多くの生成AIは膨大な学習データから答えを導き出すがコンパクトにしたデータを利用しても設定によって90~95%の精度を保てることが判明。電力消費も大幅に減り、温室効果ガス排出量は8割減らせることが分かった。ガデパリ研究員は「これまで環境を意識したAI開発には太陽光発電の導入など巨額な投資が必要と考えられてきたが、生成AIは多くの無駄な動きをしている。この方法ならソフトウェアを変更するだけ」と話す。省エネAIの開発をめぐっては、国連は各国政府や大手IT企業と連携し技術開発や基準作りを勧める方針。

WOW!The World
チェンマイ 灯篭のイーペン祭り

タイのチェンマイで灯篭のイーペン祭り。人々は人生は光と知恵によって豊かな未来に導かれると信じている。今年はシリキット王太后を追悼する光のトンネルも。花で飾った灯籠を川に流す。この祭りは旧暦12月の満月の日に多くの人を魅了し続けている。

フラミンゴの子どもが脱走?

イギリスの野生保護施設から施設のアイドル・フラミンゴの子どもが脱走。生後5か月でまだ羽が灰色。これからピンク色になる。逃げ出さないよう羽の一部が切られていて飛べないはず。パラダイス・パークの園長は、なぜ飛べたのかはわかりませんが、風にあおられて飛んだのかもしれませんと述べる。施設は捜索への協力を呼びかけている。

ニューヨークに剣闘士集結

剣闘士による闘いがコロッセオではなくニューヨークのセントラルパークで繰り広げられる。これは非営利団体によるイベント。剣闘士になるための講習もある。ABCの記者が挑戦。40キロある防具を装着。記者は完全な初心者、なんとか無傷で終わる。団体は様々なトレーニングやスポーツイベントを無料で開催しているという。

SPOT LIGHT INTERNATIONAL
世界に果たす役割とは

青年海外協力隊は1965年に開始。教育や農業などの技能を持った若者が開発途上国で支援活動をする事業として日本が始めた。制度の変更などに伴い、7年前には海外協力隊に名前を改める。99か国、延べ5万8000人余を発見。2016年にはマグサイサイ賞を受賞するなど高い評価を得ている。世界に果たす役割とは。

海外協力隊60年 世界に果たす役割は

海外協力隊が初めて派遣されたのはラオス、これまでに延べ1110人が活動してきた。首都・ビエンチャンでは海外協力隊60周年を記念した式典が開催された。式典には隊員やラオス政府の関係者らが出席した。ラオス・トンサワン外相は「日本の海外協力隊は両国民の間で教育・スポーツ・農林業・観光・貿易などで知識の発展と交流に不可欠な役割を果たした」と述べた。隊員第1号で58年ぶりにラオスを訪問した大西規夫(84歳)は「感慨無量」と話す。農家に生まれた大西は高校卒業後に農業を学ぶために渡米、アメリカの若者が海外ボランティアに高い関心を持っていたことに刺激を受けて24歳の時に海外協力隊に応募した。大西は日本の田植え方式を導入、今ではこの方法が広がり収穫量が増加した。今回、大西は現役隊員との交流も行った。菊地友輝(33歳)はラオスの柔道連盟の選手たちを指導している。ラオスではスポーツ事業の予算が限られている。元自衛隊の柔道選手だった菊地は「選手の技術レベルをあげて欲しい」との要請を受けて派遣された。菊地は日本の支援で建てられた道場を拠点に活動しラオス代表選手の強化にあたっている。

海外協力隊 60年 その役割

海外協力隊の活動は、その国との関係強化につながり国益にかなうものだが、国民がインフレで苦しむなか海外支援に税金を使うのかという厳しい声もある。協力隊は日本にとって望ましい国際環境を作るための長期的戦略とみるべき。協力隊の活動の最も大きな意味は日本の顔となり現地の国や地域と信頼を結ぶ存在となること。協力隊第1号の大西規夫は日本の食料自給率が他国と比べて低いことに触れ、日本の豊かな状況が未来永劫続くとは限らないとして「地道な活動を通じた信頼関係が将来、日本を助けてくれることにつながる」と話していた。アメリカのトランプ政権が対外援助を大幅に見直すなど国際協力をめぐる環境は厳しくなっている。専門家は日本の国際社会への向き合い方が問われていると指摘している。早稲田大学・山田満教授は「協力隊は最も非軍事的な人間と人間の信頼関係に基づく。今後も絶対止めてはいけないし日本の役割として重要」と話す。

(ニュース)
アメリカ「米国第一主義」で観光客減少

アメリカでは今月下旬、感謝祭の祝日に合わせてホリデーシーズンを迎える。アメリカ第一主義を掲げるトランプ政権のもと、各国からアメリカを訪れる観光客が減少している。今年の外国人観光客による消費は約1兆9000億円減少するとの試算もある。アメリカとカナダの国境にある観光名所・ナイアガラの滝ではカナダからの観光客が減少している。アメリカ・トランプ大統領の「カナダが51番目の州になるのを見てみたい」という発言やカナダへの関税措置により両国の関係が悪化した。地元の観光名所を紹介するホームページへのカナダからのアクセス数は2月から減少し9月には前年同月比60%余り減少した。観光ガイド・ピーター・グリーンは「回復には2~3年かかるだろう。国境管理やトランプ大統領のさまざまな発言に対する不安が少し和らいでいるのでカナダ人観光客は今後増えるだろう」と話す。

ネバダ州ラスベガスでも観光客の減少が課題となっている。今年6月、7月は去年と比べて2桁のマイナスとなった。カナダ人観光客の減少や移民政策が旅行者の減少につながっていると指摘されている。さらに物価高が追い打ちをかけている。ラスベガス観光局のPR動画では、さりげなくレストランの価格の手ごろさをアピールしている。ホテル客室清掃員・シャリアテイラーによると宿泊客の置いていくチップが家計の支えとなっていたが今年に入ってからチップが1割ほど減ったという。シャリアは「トランプ政権により再び不況に陥ろうとしていると感じる」と話す。地元のレストランやホテルで働く人々の組合では観光客の減少傾向が続けば、今後解雇の動きが広がると危機感を強めている。労働組合幹部・ディアナヴァイェスは「カナダやメキシコの観光客は最大のお得意様だったが関税のせいでアメリカに観光に来なくなった。今後、解雇される人はさらに増えるだろう」と話す。

INTERNATIONAL NEWS REPORT
北朝鮮 アメリカの追加制裁に反発

アメリカ財務省は4日、北朝鮮がサイバー犯罪などで得た資金の洗浄に関与したとして、金融関係者ら8人、2つの団体を対象にアメリカ国内の資産凍結などの制裁を科すと発表。北朝鮮外務省のアメリカ担当次官はわが国を最後まで敵対視するという立場を余すところなく示したとした。その上で、圧迫と懐柔、威嚇と恐喝で満ちたやり方がいつかは実を結ぶという期待を抱いてはならないと強調。北朝鮮としてはトランプ大統領が対話に意欲を示す一方で新たな制裁の発表に反発した形。

ロシア プーチン大統領 核兵器実験の検討を指示

先月、アメリカ・トランプ大統領が核兵器の実験を指示したことを受けて、ロシア・プーチン大統領は核兵器実験の検討を指示した。5日、プーチン大統領は安全保障会議を開いた。ベロウソフ国防相は「本格的な核実験の準備を直ちに開始する必要がある」、ロシア軍・ゲラシモフ参謀総長は「核実験の準備には数か月から数年かかるため、いま適切な措置を講じなければアメリカの行動に対応する時間と機会を逃す」と指摘。これを受けてプーチン大統領は「ロシアは包括的核実験禁止条約の義務を今後も順守し続ける」とし、「私は2023年の演説でアメリカなどが実験を行った場合はそれに対して適切な対応をとるべきだと述べた」と発言。核兵器の実験の準備作業を開始する可能性について提案を行うように指示しアメリカ側をけん制した。

ドイツ当局 国際的詐欺グループを拘束

ドイツ当局が「国際的詐欺グループ18人を拘束した」と発表。この詐欺グループは2016~2021年にかけて193か国にわたる400万人以上のクレジットカード情報を盗みだし、出会い系などの偽サイトに登録した上でカード所有者が気づきにくいよう毎月の引き落とし額を少なくしていたという。被害額は計3億ユーロ(520億円以上)。集められた資金はドイツ国内2000件以上の銀行口座を経由して不正送金された。マネーロンダリングの疑いでも捜査している。

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