2025年10月4日放送 20:02 - 20:50 NHK総合

新プロジェクトX〜挑戦者たち〜
雪冤 “袴田事件” 完結編:裁判官の独白 DNA鑑定の真実

出演者
有馬嘉男 森花子 本田克也 村山浩昭 小川秀世 袴田ひで子 山崎俊樹 
(オープニング)
雪冤 “袴田事件” 完結編:裁判官の独白 DNA鑑定の真実

無実でありながら死刑囚として世界で最も長く収監された袴田巌。静岡県旧清水市、味噌会社で4人が殺害された。警察は元ボクサーの袴田巌を逮捕した。自白を強要され死刑判決を言い渡された。獄中から必死で無実を叫び続けた。弟を救いたいと姉・ひで子は戦い続けた。これは人々がバトンを繋ぎえん罪を晴らした雪冤の物語。

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清水市(静岡)
オープニング

オープニング映像。

オープニングトーク

今回まず伝えるのは再審開始決定を勝ち取るもう1つの決め手となったDNA鑑定をめぐる知られざるドラマ。

雪冤 “袴田事件” 完結編:裁判官の独白 DNA鑑定の真実
雪冤 “袴田事件 裁判官の独白 DNA鑑定の真実

2014年3月27日、再審開始決定を勝ち取った。それを可能にしたもう一つの新証拠がDNA鑑定だった。鑑定を引き受けたのは法医学者の本田克也だったこの事件では既に2000年にDNA鑑定が行われていた。シャツの右肩についていた血痕。この血痕は犯行時に肩を怪我した巌の血だと検察が主張していたため鑑定が実施された。だがこのときは鑑定不能という結果だった。本田は弁護団から再鑑定を依頼されたが断った。本田は過去DNA鑑定にまつわる苦い経験があった。それは足利事件のときのことだった。足利事件では警察庁が当時導入したばかりのDNA鑑定が決定的な証拠とされ菅家利和さんが犯人とされた。事件の弁護団はDNA鑑定が間違っている可能性があるとして本田に再鑑定を依頼した。再鑑定の結果、DNAは一致しなかった。DNA鑑定を覆すことは捜査機関の威信を落とすことになる。捜査側の再鑑定でもDNAは一致しないことが判明これによって菅家さんの無罪が確定した。間違いをしてきされたら権威はガタ落ち。そのため検察からものすごい反論書が現れすごい辛辣な言葉で書かれた。そのため本田は袴田事件を引き受けることが出来なかった。その後、弁護団長からどうしてもと頼まれ、本田は渋々引き受けた。本田は血液細胞だけを凝集させて鑑定をすると、シャツの血痕から抽出したDNAは巌のDNAと一致しなかった。2014年3月27日、静岡地裁は再審開始を認めた。

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袴田ひで子は「一番最初に巌の血ではないってことを知らせて頂いた時に、肩がすーっとした」などと話した。なぜ協力しようと思った?と聞かれ本田克也は「真実を掴む手段が残っている。残っているとすれば法医学者としてそれを完成させる義務があると思った」などと話した。

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袴田事件
雪冤 “袴田事件 裁判官の独白 DNA鑑定の真実

再審開始決定した日、驚く出来事があった静岡地裁は重要な証拠がねつ造された疑いがあるとして、前代未聞の即日釈放に踏み切った。この決定はある裁判官が覚悟の元に下したものだった。村山浩昭は2012年から裁判長として担当した。村山が驚いたのは弁護団が最初にやり直し裁判を求めてから最高裁の判断が出るまで27年もかかっていることだった。村山たち裁判官は検察に証拠の開示を促し続けた。村山たちが注目したのは事件の1年以上あとに、突然発見された5点の衣類だった。その衣類は巌が犯行時に着ていたとして死刑確定の決定的証拠とされていた。味噌漬け実験の証人尋問が行われた。山崎俊樹が衣類は3ヶ月でもすっかり味噌の色に染まるという実験結果を報告。検察の証拠として出されたシャツが1年以上も味噌に浸かっていたという割に白いままだったという矛盾をついた。さらにDAN鑑定。村山は捜査機関がねつ造したっていうことになると全くう矛盾なく説明がついてしまうという結論に達した。ねつ造を指摘し再審を開始するべき、しかしそれは司法の根幹を揺るがしかねない重大な判断だった。この事件、最初の裁判で死刑判決を書いた裁判官が40年後、私は無罪だと思っていたという告白をした。告白したのは熊本典道。熊本は当時、脆弱な証拠だけで巌を殺人犯と断定できないと考えていたという。しかし他の2人の裁判官は巌が犯人だと主張。やむなく死刑判決書いた。その後、苦しみ続け守秘義務を破る異例の告白をしたのち、熊本は亡くなった。有罪判決の下る割合が99.9%の日本の裁判。その中で30件以上の無罪判決を下した恩師・木谷明の「公平に判断して自分で考えた結論をなにかの都合とか忖度で変えるようでは裁判官じゃない」という言葉が村山の背中を押したという。村山は「捜査機関によりねつ造された疑いのある重要な証拠によって有罪とされ、極めて長期間、死刑の恐怖のもとで身柄を拘束されてきた。拘置をこれ以上継続するのは耐え難いほど正義に反する状況にある」と判断を下した。

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なぜここまで踏み込んで話をしようと?と聞かれ村山浩昭は「袴田事件を知れば知るほど、今の日本の司法に対する大きな問題点が明らかになった。それをそのままにしていいのかと。こういうことが今の日本の社会で許されていいのかと。確定死刑囚が再審無罪となったのはこれまでに5例しかない。訴追する側が証拠を作って袴田さんを死刑囚に仕立て上げた。これは正義に反する」などと話した。袴田ひで子は「村山さんは巌の命の恩人だと思っている」などと話した。

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雪冤 “袴田事件 裁判官の独白 DNA鑑定の真実

釈放され48年ぶりに日常を取り戻した巌とひで子。しかし戦いは終わっていなかった。村山の決定に検察が異議申立を行い判断は高裁に委ねられた。巌は確定死刑囚という身分のままだった。4年後、東京高等裁判所は本田のDNA鑑定は再現性がなく信用性が乏しいと否定。また5点の衣類はねつ造の可能性は低いと判断した。弁護団は特別抗告。判断は最高裁に委ねられることになった。ひで子は何があっても弟を守る。ひで子の気迫が周囲の人々をさらに奮い立たせた。支援者の1人、日本プロボクシング協会の新田渉世は、何度でも立ち上がるひで子の姿勢に打たれたという。新田は歴代の世界チャンピオンに協力を求め、巌の無罪を訴え続けた。さらに釈放後の暮らしを支える支援に挑むものも現れた。猪野待子は知人たちに声をかけ袴田さん支援クラブを立ち上げた。そして大きな転機が訪れた。最高裁はDNA鑑定の証拠価値を否定する一方、5点の衣類は審理が尽くされていないと高裁へ差し戻した。2023年3月13日、東京高裁は5点の衣類はねつ造の疑いがあるとし再審開始を決定した。検察は抗告を断念し裁判のやり直しが確定した。2024年9月26日、静岡地方裁判所は5点の衣類など3つのねつ造を断定。巌の無罪判決が言い渡された。

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無罪判決が確定して去来する感情ってなんでしょう?と聞かれ袴田ひで子は「皆さんにお礼が言いたい。警察を恨むとか恨まないとかって感情はない」などと話した。小川秀世は「ひで子さんは警察とかに対してねと思うけど、ぼくは58年、厳さんが閉じ込められ苦しめられたのは許せない。こんなことはもう2度とおこしてはいけない」などと話した。

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雪冤 “袴田事件 裁判官の独白 DNA鑑定の真実

弟の無罪を勝ち取ってもひで子さんは動き続ける。えん罪と戦っている他の人を励まそうと全国を飛び回っている。村山浩昭さんは証拠開示のルールを定めるなど再審制度の改正に力を注いいでる。本田克也さんはえん罪被害者をはじめ、鑑定を求める人たちのためにNPOを立ち上げた。山崎俊樹さんと小川秀世さんは過酷な取り調べや証拠の捏造をおこなったとして捜査機関に対し責任を追求する裁判を起こす。巌さんは今年89歳になった。

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(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

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