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今年、高知県立美術館は税金1800万円を投じて購入した絵画が贋作と判明した。徳島県立近代美術館では税金6720万円をかけるも、作品は贋作だった。番組では稀代の贋作師と称され、服役を終えたヴォルフガング・ベルトラッキにインタビューした。
岡山にある企業が営むギャラリーではミレー、ルノワールなど近代画家が手掛けた作品を約300点展示している。このギャラリーで美術品の管理を担当する黒瀬さんは展示作品の1枚、「モンパルナスのキキ」がヴォルフガング・ベルトラッキが手掛けた贋作ではないかという情報を受け取ったという。調査を実施したところ、ベルトラッキの贋作であることを示すラベルが見つかった。
取材班は服役を終えてスイス・チューリヒ近郊に暮らすヴォルフガング・ベルトラッキのもとを訪れた。普通に絵を描いて売るよりも贋作を売る方がワクワクしたという。2006年、ドイツのオークションである絵画が4億4000万円で落札されたが、科学調査で贋作と判明。制作者のベルトラッキ、販売に関わったとして妻らが逮捕された。犯行から10年が経過したものは時効が成立するため、裁判で有罪となったのは14点だけ。司法取引にも応じたことから、懲役6年で幕引きとなった。
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高知県立美術館が購入した作品はベルトラッキが90年頃に描いたという。ハインリヒ・カンペンドンクの作品は戦禍で行方知らずとなっていて、ベルトラッキにとっては好都合だった。作者の故郷を訪れるなどして作品のイメージを膨らませたといい、「私が描くのはコピーではなく、新しい絵」と語る。妻のヘレネはイギリスのオークション会社であるクリスティーズに贋作を持ち込み、誰に所有されてきたか来歴も偽装した。20世紀前半、画商のオットー・ヴァッカーとその一味はゴッホの絵画を、ハン・ファン・メーヘレンはフェルメールの絵画を捏造したが、ベルトラッキは少なくとも45人の画家に偽装していた。あまり著明ではない芸術家の作品とあって、真贋の判断が難しいのもポイントだという。
高知県立美術館の奥野克仁学芸員は名古屋の画廊から「ハインリヒ・カンペンドンクと思われる作品が見つかった」と紹介された。この画廊はクリスティーズから購入していて、美術館では開館間もないこともあってコレクションの収集に前のめりだったという。ベルトラッキは「80年代の終わり、日本人の熱狂ぶりは異様だった」と振り返る。
岡山のギャラリーはモイーズ・キスリングの「モンパルナスのキキ」と思われていた作品が贋作であると公表した。美術品の管理を担当する黒瀬かおりさんはリモートでベルトラッキとやり取りし、ベルトラッキは「その作品は今もキスリングの作品。だって、私が彼になりきって描いたのですから」と語った。謝罪、反省の言葉は一切、無かった。スイスではベルトラッキが天才贋作師として持て囃されている。10代前半、ピカソの模写を1日で掻き上げ、周囲を驚かせたという。
番組では捜査機関と連携して事件解決に貢献したホワイトハッカーに協力を依頼。ネット上に公開されている情報の収集、分析を得意とし、ベルトラッキが手掛けた贋作の1枚と酷似した作品の写真がSNSに投稿されているのを見つけた。スペインの国立美術館であるソフィア王妃芸術センターに展示されていることがわかり、取材班は幹部に情報を提供した。95年から30年間、所蔵しているといい、来歴を辿ると、ベルトラッキの妻がオークションに持ち込んでいたことが判明。国立の美術館が所蔵する絵画に贋作の疑いが生じ、展示が取り下げるのは初めてだという。
コレクションに贋作が紛れ込んでいると判明した場合、コレクターの威信は失墜しかねず、贋作の発見に協力的ですらないという。
高知県立美術館ではベルトラッキの贋作として作品を公開していくという。岡山のギャラリーで作品の管理を任される黒瀬さんは「キスリングの気持ちになって描ける人はキスリング以外いない。どんなに分かったつもりでも、人の心なんて分かるはずがない」などと話す。贋作にはない、本物の価値とはなにか。それを突き詰めて考えた先に、物事の本質があるのかもしれない。
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