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オープニング映像。日本が国際連盟を脱退し、戦争へ突き進む転換点となった1933年に建設が始まった教会の解体に密着する。
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静岡市清水区にある「旧カトリック清水教会」の解体を田中道子が取材。12~15世紀にヨーロッパで広がったゴシック様式。塔など尖った形状で高さを巧みに表現し、内部にはステンドグラス、天井を高くすることで光にあふれる。ドイツのケルン大聖堂やフランスのシャルトル大聖堂などが代表的。西洋の教会は「石造」だが、清水教会は「木造」。第二次世界大戦が始まる前の1935(昭和10)年に完成。当時、清水に木材の集積場ができて良質な材木が手軽に入ったことから木造になったという。礼拝堂の中は「畳」になっており、信徒たちは靴を脱いで建物の中に入った。天井は「リブ・ヴォールト」。ゴシック建築に用いられる様式。あばら骨を意味する「リブ」とアーチ型の天井を意味する「ヴォールト」が組み合わさることで美しい曲線を織りなす。清水教会の天井は木の板を繊細に折り曲げることで曲線を作っている。そこに漆喰を塗ることで石造の教会のような美しい天井を生み出した。建築から90年近く経過して老朽化したことから移築することになった。
カトリック清水教会の建設を計画したのは明治時代に来日したフランス人のルシアン・ドラエ神父。教会を建てた経験のある職人が見つからなかったことから、船大工を頼った。清水は造船業が盛んで優れた船大工がいたことから、船底のような曲線の美しい天井が生まれた。教会は1935年に完成。戦局の悪化で清水の街も米軍に空爆されたが、教会だけは空襲を免れ、救護所となった。ドラエ神父も日本に留まり、平和への祈りを捧げた。時代を重ねて地元の人々の厚い信仰の場となっていった。現在の場所には新しい聖堂が建てられ、旧カトリック清水教会の建物は今の姿のまま新たな場所に移築される。地元のための文化施設として活用される予定になっている。
90年近く経った木材はほとんど残すことはできないが、窓ガラスや装飾は外して使えるものは極力使う。難関ポイント(1)「移築するためにパーツを壊すことなく取り外せ」。この日の作業は柱の装飾を取り外す。担当するのは左官職人歴38年の松本さん。石膏で作られた3種類のパーツで構成され、隙間はかたい漆喰で塗り固められている。パーツ間を切り離して取り外すが、石膏は脆く壊れやすいという。まずは装飾の下側を電動工具で切り離す。パーツの隙間はカッターナイフで少しずつ削っていく。ある程度作業が進んだところで、カッターの柄で叩いて音をチェックした。漆喰が切り離されて装飾が浮くと内部に空洞ができて音が低くなるという。まだくっついている場所を探して削り、1つ目のパーツを取り外した。その後も作業は続き、地元の人々に親しまれてきた鐘も地上に下ろされた。
5月下旬、田中道子が2か月ぶりに旧カトリック清水教会の解体工事現場を訪れた。天井の漆喰は剥がされ、木の下地がむき出しになっていた。ヨーロッパではステンドグラスだが、清水教会の窓は型ガラス。障子をイメージしたデザインになっている。この日は懺悔する告解部屋の窓ガラスを解体する。ガラスのみを取り外すことはできず、木枠も経年劣化でボロボロのため、窓の周囲の壁を切断して取り外した。
難関ポイント(2)薄くてもろいリヴ・ヴォールトを壊すことなくつりおろせ!。リブ・ヴォールトの複雑な曲線は設計ソフトでも再現が難しく、傷つけることなく吊り下ろして部材の曲がり具合を測定する必要があるという。部材を補強するための角材を取り付けた後、屋根から切り離し、足場の狭い隙間を慎重に下ろして行った。解体工事は7月に終了し、新たな場所に移築される予定になっている。
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