2023年7月21日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

首都圏情報 ネタドリ!
広がる「副業」光と影 〜働く人が報われるには〜

出演者
合原明子 川上淳之 
(首都圏情報 ネタドリ!)
広がる「副業」光と影 “働く人が報われるには”

きょう国が公表したデータによると、副業を持つ人は約332万人いるという。2017年比で約64万人増えている。背景には国が副業を推進してきたことがあり、そこには人材交流を活発化させ、人手不足を補うなどの狙いもある。しかし取材を続けると、副業を持つことがやりがいや自己実現に繋がっている人がいる一方、仕事を掛け持つことで過労となり、体や心のバランスを崩してしまう人たちがいることも分かってきた。きょうは、大きく二極化する副業の実態を見つめることで、働いた人がその分豊かさを得られる当たり前の社会をどう築いていけばいいのかを考える。

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副業
広がる「副業」 “やりがい”や“成長”につながる

東京・日本橋で、飲食店が集まる商業施設のテナントを運営する河賢男さん(33)は、大手不動産会社で都市開発を担当している。会社ではチームとして働く醍醐味を感じて来たが、個人としての力も試したいと副業を持つことにした。夜、河さんが向かったのは副業先のカフェバル。去年、オーナーとして自ら店を始めた。本業で多くのテナントと接する中、接客や店舗経営を学びたいと考えていた。開業資金が限られていたため、テーブルやイスなどはすべて手作りした。副業を始めて1年、以前は知り得なかった飲食店側の気持ちを実感することができた。こうした副業での経験は本業でも役立っている。テナントを募集する際、内装費は全額河さんの会社で負担することにしたところ、出店を希望する店が殺到し、人気店や有名店も入り、施設の注目度を上げることが出来た。河さんが務める会社では副業申請する人が増え続け、社員全体の7%以上に上っている。副業では本業では経験できないことを経験でき、前向きな気持ちを醸成することなどにつながる。

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副業日本橋(東京)

副業をいくつも掛け持ちすることで自らの成長を図ろうとする人もいる。高千穂香織さん(28)の本業は中小企業診断士。やりがいを感じていたが、他の仕事にも挑戦したいと、副業を持つことにした。1つ目の副業は専門学校の講師。2つ目の副業はオンラインイベントの司会。さらに、WEBライターとして副業の経験を記事にするなどして発信している。また、企業セミナーで講師もしている。忙しい日々だが、自らの成長を実感できているという。

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副業
自治体職員も副業!? “地域の課題”解決へ

副業は本人だけでなく地域の人たちのメリットにもなる可能性がある。自治体職員向けの副業セミナーが開かれた。講師は横須賀市役所に務めながら副業でコンサルティング業を営む高橋さん。高橋さんは様々な市民の悩みに触れてきたが、個別には応じられないという市役所ならではのもどかしさを感じていた。高橋さんが副業として始めたのは市民と企業とをつなぐコンサルティング会社。市民から悩みを聞き取り、社会貢献に取り組む企業と交渉し、支援に繋げている。市役所での勤務が終わった夕方から、市民のもとをまわって悩みや課題を見つけ、企業と繋げるなどともに解決策を探っている。高橋さんにとって副業は、本業の立場ではできない手助けを行う手段。

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副業横須賀市役所
広がる「副業」 働く人・企業・社会へのメリットは? / 「副業」の労働時間 どう管理?残業代は?

労働経済学が専門で副業について研究している東洋大学教授の川上淳之さんがゲストとして迎えられた。川上さんは副業のメリットとして、収入が増えること、副業の経験を通じて将来のキャリアにつなげたり、自身のネットワークを作ることができること、複数の仕事を持つことにより片方の仕事を失った時のリスク分散の効果、やりたいことを副業で実現できる可能性の4つを挙げた。また、副業する人が増えていくことによる企業・社会にとってのメリットとしては、人材不足解消、副業で得たスキルの本業への還元、地域の活性化の3つを挙げた。一方で、企業では副業をきっかけにして人材が流出したり、企業の重要な情報が漏洩したりするリスクもある。中でも大きな懸念となっているのが「労働時間の管理」に関すること。副業を行うと法定労働時間を超えてしまうため時間外労働で割増賃金となり、それは副業先の企業が支払うことになっているが、副業を行っている本人はなかなかそれを副業先に伝えにくいという声がある。また、企業側からも割増賃金は負担したくないという声がある。

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副業東洋大学
「本業」に加え「副業」のしすぎで… 体を壊した男性

モリヤさん(40)は、半年前前まで介護施設で正社員として働きながら、飲食店や工場で副業をしていた。妻と幼い子供の4人家族を本業だけでは養えず、副業をせざるを得なかったという。介護施設の夜勤明けに、副業として飲食店で勤務していたほか、休みの日には工場で日雇いの仕事をしていた。それでも手取りは30万円未満だった。月の時間外労働は過労死ラインに迫る約70時間となっていた。そのうち60時間以上は副業先で働いていたが、そのことを会社に伝えるのは難しかったため、伝えずにいた。こうした生活を4年ほど続けていたところ、体を壊し本業も副業を失った。

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副業
「副業」の労働時間 どう管理?残業代は?葛藤する企業

副業する人の労働時間をどう管理するかについては、企業側も難しさを感じている。千代田区で行われた中小企業の経営者が集まり行われた勉強会でも、副業をしている人の賃金に関することが話題に上がった。勉強会に参加したコールセンター社長の茶谷武志さんは、土日の人手不足を補うため、副業として働く社員を受け入れた。しかしその社員は本業での忙しさを理由に休みが続いており、茶谷さんは困っていた。「どこかで働いていることが理由となって休んでしまうのは困る」とのこと。茶谷さんはその社員に本業での勤務実態を聞きたいとも思ったが、他社のことを聞くのは憚られ、できなかった。茶谷さんは「見えないところでどのような働き方をしているのか全てを管理することができない。その点が難しいところ」などと話した。

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副業千代田区(東京)東京中小企業家同友会町田(東京)
お金のため“副業せざるを得ない” 増える背景は? / 広がる「副業」光と影 “働く人が報われるには” / 広がる「副業」光と影 “働く人が報われる社会を築く”

スタジオトーク。「副業している人の割合」を本業の年収別にグラフにしたものが紹介された。年収800万円以上と、年収400万円未満が高くなっている。この5年では特に、低収入層の副業者が増えている。コロナ禍で本業の収入が減ったことや物価高などが影響していると考えられる。副業をしている人の約49%が本業の年収が200万円未満だという。本業の企業で従業員一人ひとりの労働時間をすべて管理していくとコストがかかってしまうことが、副業を認めることをやめてしまうという企業判断につながることもある。ただ、国としては副業を認めていくなかで労働時間の管理や健康管理を進めていかなくてはならないという方向でルール決めをしてきている。しかし今回紹介されたようなケースもあり、実態把握を続けていくことが大切。収入が必要な人のための副業と、そうでない人の副業は分けて考えるべき。本業の基盤がしっかりしている人たちにとって、副業は生き生きと働くことやキャリアを伸ばすためのツールとなるが、収入を補うために副業をしている人にとっては副業は重い負担となっている。副業の光と影、それは社会の歪が大きくなっているとも言い換えられる。国や企業は個人に働き方を委ねることなく、誰もが安心して働くことができるよう仕組みづくりを早急に行う必要がある。

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