2023年10月6日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

首都圏情報 ネタドリ!
続発する建設事故 背景に何が 住まいへの影響は?

出演者
合原明子 三原斉 
(首都圏情報 ネタドリ!)
“建設現場の事故” 背景は?影響は住まいにも…

建設現場で相次ぐ事故を取材すると、建設業界の危機的な状況が。先月、東京駅近くの高層ビルの建設現場で鉄骨が落下し、2人が死亡、3人が怪我をする事故が発生。7月には建設中の橋桁が落下、8人が死傷するなど人命が失われる大きな事故が相次いでいる。日本建築学会 会長の竹内徹さんは、いま建設産業界で今回の事故に限らずいろんな不具合、不祥事が起きていると語る。専門家が変わらなければいけないと指摘する建設業界。今回当事者たちが現場の実態について語った。建設業の危機の真相に迫る。

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日本建築学会東京都
(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

(首都圏情報 ネタドリ!)
“建設現場の事故” 背景は?影響は住まいにも…

東京駅近くのビルの建設現場で起きた事故について、一昨日建設途中の鉄骨の梁を下から支える土台部分の強度が不足していた可能性があることが捜査関係者への取材で分かった。日本建築学会 会長で東京工業大学の竹内徹教授は背景に建設業かが抱える二つの大きな課題があると指摘している。

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日本建築学会東京工業大学竹内徹
建設業界の“人手不足” 現場はいま…

建設業界の実情を知ってほしいと、埼玉県に本社を構える会社が取材に応じた。建物の骨組みとなる鉄筋工事を専門とする会社では15年前仕事を頼める日本人の職人は約500人いたが現在は約200人程度にまで減っている。そのほとんどが50代以上。西部スチール 専務執行役員の金井孝悦さんは、いわゆる若い人たちが好んで入る現場ではない、などと語った。職人の諸見里安吉さん(67)は、同世代より稼いでいたと思う、なかには家一軒買えるぐらいもうけた人もいたと話した。しかしバブル崩壊やリーマンショックを経て、その状況は一変した。現場で働く職人の平均年収は全産業の平均を100万円程下回る程に低迷。建設業界で働く29歳以下の割合はこの20年余りの間に1割ほどにまで減っている。現象した若者の穴を実質的に埋めてきたのが技能実習生だが滞在は最長で5年に限られている。国は熟練した技能者を対象に事実上無期限に滞在できる在留資格・特定技能2号を新設した。しかし全国で12人にとどまっている。

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バブル崩壊リーマン・ショック外国人技能実習制度特定技能2号西部スチール
建設現場の現実 “工期を変えられない…”

取材を進めると建設現場に無理が生じる要因も見えてきた。元現場監督の30代の男性は、常に気にしていたのはデベロッパーとゼネコンの間で決められた工事期間。下請け企業の一員として現場の作業を指揮していたが、間に合わせるよう強く求められていたという。男性は「夏場だと台風が来てしまったり細かいところでちょっとずつ作業が止まったりする」「デベロッパーに1週間だけ工程を延ばさせてください、と話をしにいったときに”もうホームページに発表の日時だったり決まっているからなんとか間に合わせてくれ”そんな感じの言い方はされた」という。男性は体調を崩し会社を辞めた。男性は「人を増やすかなにかして二交代制みたいな形にしないとどこかしらでガタが来ますと話はさせてもらった なかなか人もいなかったりするので対応してもらえなかった」と明かした。

続発する“建設現場の事故” 背景は? / 日本の建設業界の“特殊性” 現状を変えるには

ものつくり大学 教授の三原斉は、世界の建設ラッシュが建設業界の危機をさらに深刻にしていると指摘。コロナが収束して経済が循環してきた、建設するにあたり資材が必要で、日本に中々入ってこないという現象が起こっている、日本は円安で原油高の影響を受けている、さらに原油高ということが二次製品でアップしてしまう状況が続いている、やっと資材を変えたときには工期が延びてしまっている、そこでしわ寄せがやってくるのが今の現状だという。日本建築学会 会長の竹内徹さんは、設計変更や環境変化に伴うコストやスケジュール見直しは国際的に認められているし、ある程度作業が分担することによる調整は施主(建築主)がやらなきゃいけないのが海外の常識だといい、いままでの日本の建設業界の発注の仕方受注の仕方がむしろ特殊だった、などと指摘した。三原斉は、ボードを使って日本は建築主がゼネコンに発注して、ゼネコンが一つの仕事をパッケージとして捉えて工事をしていくなどと説明。一方海外では、建築主がコンストラクションマネージャーを雇い、建築主が配管工などに直接発注する、指示するのは、コンストラクションマネージャーでお金の流れがわかりやすいという。日本は今後は海外にようにしていかないと行けないと考えていると述べた。

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日本建築学会
建設業界の危機 “住まいの修繕工事が進まない…”

東京・大田区の築48年のマンション。今年、大規模な修繕工事に着手した所、思わぬ事態に陥った。建物の給水管を一新する工事が始まった時に「契約のときに業者が4,5人で作業するということだったけどフタを開けてみると毎日ほどんと2,3人でやっていた 工事のときに断水が長くなった」とマンション 管理組合理事の高橋明彦さんが語った。工期が予定より1カ月長引いたことで料理や洗濯の制限の時間ものびた。さらに老朽化した排水管も今年中に一新する計画だったが、工事を引き受けてくる建設会社が見つからず手を付けられていない。今、全国の築40年以上のマンションは125万戸以上ある。大規模な修繕工事を手掛ける埼玉・新座の会社には工事の依頼が相次いでいるが、その多くを断っている。会社が直面しているのは現場監督の不足。大規模な修繕工事では1つの現場の1人以上の現場監督を配置しなければならない。ところが高齢化による引退などで10年間で退職者は27人にのぼる。現在この会社の現場監督は10人で新規採用を目指しているがほとんど応募がないのが現状。サンエーテクノ取締役の塚原康一さんは、絶対的に現場監督の人数が必要になるので、そこにいちばん苦労しているという。

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サンエーテクノ大田区(東京)新座(埼玉)
建設業界の危機 “私たちの住まい”はどうなる?

修繕工事の支援を行うスマート修繕の別所毅謙さんによると、ここ10年でマンションの大規模修繕の工賃は3~4割あがっていて、以前の相場の2倍ほどのケースもあるという。三原斉は新築と基本的に同じで材料の高騰と人手不足と原油高が原因だと言う。さらに建設業界では大企業や中小企業に適用されてきた残業規定が来年四月から建設業界にも適用されることになる。三原は建設業界では大変なことになっていて、現場では工期を守るために残業したり土曜日出てきたりしていたのができなくなる、非常に現場としてはつらい状況が続くという。

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スマート修繕別所毅謙
住まいに影響も 建設業界の危機 どう乗り越える?

埼玉・東松山にある建設会社で働く坂麻弥さんは、業界の期待を集める資格の持ち主。坂麻弥さんは、建設ディレクターという資格を取って業務をしていると話す。民間の資格・建設ディレクターは、様々な報告書の作成などを担う新たな職種。資格を取得した人は現在1000人以上。そのほとんどが建設以外の分野からの参入者。この会社では今、6人の建設ディレクターを雇用し、現場監督の時間外労働を大幅に削減できたという。伊田テクノスの楢崎亘さんは、特に乗り込みの3カ月で約半分になった、非常にうまくいったことになると話していた。

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伊田テクノス東松山(埼玉)

企業の垣根を越えて効率化を図ろうという模索も始まる。東京・千代田区の大手通信会社を訪れたのはライバル関係にある大手ゼネコン2社。業界全体で利用できる新たなシステムの開発を目指している。想定しているのはデジタル技術のさらなる進化。工期の遅れや人員の逼迫状況をリアルタイムで表示するモニタでは、200を超える現場の進捗状況をひと目で把握出来る。各社が持つデジタル技術を横断的に利用することで、業務の効率化を図り、人手不足の解消を目指している。清水建設 専務執行役員の山崎明さんは、我々が今までやってきた業務をきちんと分析してどこが標準化出来るか見極めなきゃいけない、きちんとビッグデータとして溜まっていて、それを分析して次はこういう工程の組み方をしたほうが効率的にいくと見える形に1,2年でもっていきたい、と語っていた。

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NTTコミュニケーションズ千代田区(東京)清水建設竹中工務店

三原斉は、日本はずっとスクラップ&ビルドといって、作っては壊しということをしてきたが、それでは活性化は図れない、改修工事をしながら長く使い続けることも必要だと思う、などと語った。働き方改革以降も技能者達が安全で安心な生活を続けることが出来るような、そんな建設業界を目指していただきたいとした。

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