- 出演者
- 合原明子 岡本正
東京・板橋区にある大規模マンション。マンションで避難生活を続ける前提で備蓄品を備えてきたが能登半島の現状に不安をつのらせている。最大震度7の揺れが襲うとされている首都直下地震。今回、専門家のよるシミュレーションから深刻な仮住まい不足が生じることが明らかに。壊れた家などで生活を強いられる人が都内だけでも最大112万人に上るという。さらに熊本地震のその後を取材すると多額のお金がかかる厳しい現実も見えてきた。
オープニング映像。
大地震で住宅が被災した場合、私達は避難の後、長ければ数年に渡ってプレハブなどの仮設住宅などでの仮住まい生活を強いられる。首都直下地震ではこの時期にどんな課題に直面するのか、能登半島の現状を調査した専門家がシミュレーションしたところ、都内だけでも112万人が住まいに関する深刻な事態に見舞われることが分かった。被災後の住まいについて研究してきた専修大学教授の佐藤慶一さんは、先月、調査の一環で石川・輪島を訪ねた。地震から1ヶ月半が経ち、仮設住宅の建設も始まっていた。換気や断熱性に配慮した仮設住宅も開発されている。しかし今月末までに着工が予定されているのは4600戸。大きな被害を受けた自宅で避難生活を続けている人も少なくない。みなし仮説として使われる賃貸住宅需要が増しているのではないか。金沢の不動産会社を訪れた佐藤教授。不動産会社 専務取締役の清水秀晴さんは、ピークのときは1週間で200組くらいお客さんが来られていたと話す。佐藤さんは、首都直下地震では、数が多くなるから対応のマネジメントが大変問題になるとおもう、などと語っていた。
首都直下地震後、住まいの問題に見舞われる人はどのくらいいるのか。佐藤教授は被害想定などを組み合わせ、東京都を対象にシミュレーションしたところ、仮住まい不足が明らかになった。52万3000戸が仮住まい困難者になりうることが示された。人数に換算し、最も多い足立区は18万2000人。都内全体では112万2000人。
さらに住まいの再建に大きな負担がのしかかることも見えてきた。熊本地震で住んでいたマンションが被災した奥田俊夫さんは、修繕費に関わる問題に直面した。外壁のヒビや渡り廊下の破損など、複数の被害が出たが、自治体のり災証明では一部損壊とされた。奥田さんたち住民は今後への影響を懸念し修繕工事を依頼したところ、提示された見積もりは1億2000万円にのぼった。このマンションの場合、地震保険から支払われるのは750万円に留まった。修繕積立金を充てても8600万円ほどが不足した。奥田さんは、何もない時にきついけど資金をためていくのは必要かもしれません、と話していた。
住まいの復旧にあたって、マンションならではの難しさに直面したのは、熊本・南阿蘇村に転居を余儀なくされた70代夫婦。終の棲家にと購入したマンションが地震で被害を受けた。1階部分が激しく損壊し、全壊と判定。約4000万円のローンを支払い終えた直後だった。大きな被害を受けたマンションの復旧工事は4分の3以上の合意で工事が可能。一方で賛成しない所有者は部屋の買い取りを請求することが出来る。この権利を一部の人達が行使して裁判を起こした。更にマンションの被害が当初の見込みより大きいことも判明し解体を決断。夫婦は老後を見越した資産を失うことになった。
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- 南阿蘇村(熊本)
弁護士の岡本正は、首都直下地震での住まいの課題について、災害で被災するということは生活の再建に向けたお金の支援などのニーズが発生することも意味している、これをしっかり見つめて行く必要があると話す。熊本地震での主な相談について、不動産賃貸借の問題が多いという。首都直下地震ではよりこのような課題が鮮明になってくるのではないかと話した。生活再建を助ける3つの制度として、り災証明書など3つを上げる。被災者生活再建支援金という制度は、大きな災害で適用された場合に、最大300万円の現金給付を受けられるもので、被災ローン減免制度は住宅ローン支払いに困った時破産せず支援を受けられる制度だという。岡本正は、注意点としてそもそも知らなければ使えないので覚えておいて欲しい、などと説明していた。
首都直下地震で最大9万9000人の避難者が出ると想定されている東京・板橋区。去年13の自治体と広域避難に関する新たな協定を結んだ。これまでは職員の派遣などが中心だったが、新たな協定では3日後を目安に広域避難を希望する人を募集し、7日後には避難先の自治体へ移動し、2週間ほど滞在してもらう計画。現状は75歳以上を中心に約2000人ほどの広域避難を見込んでいる。板橋区の荒張寿典さんは、ライフラインなどがまだまだ活用できるエリアに移って頂くほうがよろしいんじゃないか、などと説明した。さらに、親戚や知人宅への縁故避難をスムーズにしようという取り組みも。南魚沼市は去年、地元出身者避難サポートする準備を始めた。協力を呼びかけたのは高速道路でつながる埼玉・坂戸市。坂戸市に要望したのは南魚沼市に避難する歳の中継拠点としての役割。南魚沼市の計画では首都直下地震が起きた際、地元避難を希望する出身者にまず坂戸市までたどり着いてもらう。南魚沼市の林茂夫市長は、そこ(坂戸市)をま刺しなさいということが言っておければどれだけ安心につながるかなという想いがあったと話していた。
自治体の間でも必要性が認識され始めた広域避難は避難した後の課題も指摘されている。今月、大阪で開かれたシンポジウムに集まったのは広域避難を経験した人や支援者達。東日本大震災で避難者を支援したNPO法人代表の伊藤健哉さんは「支援する側から見るとみなし仮設に住んでいる人がどこにいるのかよくわからないということで支援が届けられない」等と話していた。
都内の区市町村に取材したところ広域避難について他自治体と協定を結んでいるのは34に上った。岡本正は、広域避難についてもともとの自治体から見れば被災者の状況が把握できなくなるので、どこに避難しても支援をしっかりしていくという体制の整備が重要になってくると述べた。東京都立大学名誉教授の中林一樹さんは、平時から災害後の復興方針や課題を話し合って決める事前復興の重要性を訴えている。岡本正は事前復興の良い点について、地域でどういう被害が発生するのかということをしっかり見つめる機会が得られることなどを上げた。岡本は東日本大震災をきっかけに災害復興法学という学問を立ち上げた思いは、災害後にあっても支払いに困って絶望してしまいそうな方々に出会ってきたからだといい、災害後の知識の備えを知っていることで希望の種になると考えるので、防災教育を進めていただきたい、と話していた。合原明子は、まずはしっかりと現実に目を向け危機感を持つことが、そのサキの未来を変えることにつながる、などとまとめた。