- 出演者
- 合原明子 森上展安 朝比奈あすか
2月の戦いとも言われる中学受験。その中学受験に地殻変動が起きている。かつては偏差値の高い難関校を目指してしのぎを削るのが定番だったが、ペーパーテストでは測れない力を問うユニークな入試が続々登場。特色のある教育を打ち出す中堅校が人気を集めている。その背景にある教育への意識の変化とは。激変する中学受験は時代の何を打ち出しているのか。
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今東京で私立中学などに進学する小学生は5人に一人。首都圏の受験者数は増え続けており、今年も過去最多の水準となった。何故今中堅校が人気を集めているのか。この10年で生徒数が2倍に増えた都内の中高一貫校で受験生を引き付けているのは、独自のカリキュラム。この日中学1年生が取り組んでいたのはドミノ倒し。ゲームを通じて思考力やコミュニケーション能力を育むことが狙い。学校が全面に打ち出しているのは個性を見いだし伸ばす教育。入試では12種類の選抜方法を導入している。2023年の自分が関心のあるテーマをプレゼンテーションする入試で、野菜づくりが大好きな受験生は、無農薬での栽培に挑戦し直面した課題などを発表した。6年間かけて自ら調べた貨物列車の知識を披露し合格した受験生もいた。宝仙学園中学・高等学校校長の富士晴英さんは、われわれとしても色んな子が入ってきてくれたほうが活気づくんじゃないか、ここで本当の自分らしい主体性 能動性を身につけて、個性を生きいいと発揮してくれる、と話した。
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- 宝仙学園中学・高等学校
変化の波は学習塾にも。約30年この業界に携わっている進学個別桜学舎塾長の亀山卓郎さんは、近年中堅校に狙いを定めて受験にのぞむ家庭が増えているという。2年前から通っている小学6年の絵美さん(仮名)に受験を勧めたのは母親。志望校は偏差値ではなく娘の個性を伸ばせるかどうかで選んだ。母親は、高学歴であれば安泰のようなことが崩れ始めたのかなと言う気がしていて、好きなことのほうが可能性が広がるような気がしていて、まずそれがあるべきだろうと、などと話した。幼い頃から大人しかったという絵美さんは自分を表現するのも得意ではなかったという。そんな恵美さんが希望して習い続けてきたのが英会話。絵美さんは、英語は自分を明るくできるチャンスだと思っています、などと話した。志望したのは英語教育に力を入れる中堅校。生徒全員が留学の機会を得られる。勉強の負担は少なくないが、母親は、先行き不透明な時代を生き抜く力を身につけてほしいほしいとえみさんと話し合い受験を決めた。先週絵美さんは志望校の合格発表の日を迎え、合格した。
中学校が多様化する中で、子どもにあう教育環境をどのように選べば良いのか、記事でも解説しているとQRコードを紹介。森上展安は、中堅校人気の背景を将来への不安とコロナ禍の影響と分析している。作家の朝比奈あすかは、東京の郊外でずっと育っていて、定点観測的に中学受験を振り返ることができてると言い、自分が中学受験をした時は、1クラスに一人、2人、3人くらいしか塾に行っている子がいなかったが、子どもの頃はクラスに4分の1,3分の1くらいは塾に通っている子がいたといい、塾の数も種類も随分増えた、などと話した。森上展安は、大学受験が半分が推薦だったり、総合選抜だったりに変わってきているので、目標にする学校も変えていかざるを得ない、などと指摘した。もう一つ学校側の変化を加速させているのが少子化。1都3県の小学生の数の推移を見ると、現象が始まっている。そういった中学校間の競争が激しくなっていることが見えてきた。
20年以上にわたり、私立中学などの相談を受けてきた横浜のコンサルティング会社・コアネット教育総合研究所では最近依頼される内容に変化が見られるという。かつては経営ビジョンの策定など学校改革に関するものが中心だったが、近年新たな教育を導入したいという相談が増えているという。コアネット教育総合研究所の福本雅俊さんは、少子化していく時に下に崩れて下がっていってしまうのか、上がる努力をしなければ維持はできないわけなので、だからこそ危機感や改革意識は中堅後ほどすごく今は強い、と話す。5年前からこの会社にコンサルティング業務を依頼している都内の中高一貫校は、建学の精神に捨我精進を掲げる女子校だが受験者数の減少に直面し、改革を迫られた。この学校が独自のカリキュラムとして磨いているのが教科横断型授業。この日が物理の実験で振り子の動きを観察。それを数学の教員が解説した。新たな教育を導入して以来受験者数は改善している。多くの学校がこうした改革に乗り出している。田園調布学園中等部・高等部校長の清水豊さんは、私学としてどうやって生き残っていくかっていうことは常に教員の危機感としてある、客観的に見た時に今この学校はどの立ち位置にいるとか、こういうところが弱いんじゃないかとかそういう視点が必要だと思います、と語っていた。
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学校間の競争について、早稲田大学教職大学院 教授の田中博之さんは、今後公立私立問わず学校間の競争がさらに激しくなっていくだろうと話している。背景にあるのは国の教育方針の転換。渋谷区では新年度から全ての公立小中学校で午後の時間を探究学習の時間に充てるなど公立の学校でも改革が進んでいる。朝比奈あすかは、学校が情報を公開してくれたりすると、自分の子どもがどんな中学校生活を送るのかイメージがし易い、親にとって良いことだと思う、とは言っても志望校選びは一般化出来ないこと、子ども一人ひとりによって全く違う、などと話した。
親を対象に開かれている中学受験がテーマの相談会。近年、子どもの個性を尊重して受験しようと思ったものの、悩みを深める親が増えているという。その原因となっているのがSNSなどで飛び交う情報。サイタコーディネーション コーティング講師の江藤真規さんは、今いろいろネット上に情報があふれていまして、情報だけを受け入れてしまうようになると、やってもうまくいかない、子どもの心がついてこないという色々な被害、弊害が起こってくると話す。2年前に長男が中学受験をした美咲さん(仮名)は、無理をしない受験をさせようと決めていたが、いざ始めてみるとSNSの情報の振り回されたという。美咲さんは、平日の1日の勉強は2時間ほどとしていたが、SNSを開くと、塾から帰ってきたらその日の内に復習させて寝たほうが定着する、などの他の受験生の投稿に心を乱されていった。冷静にならなければと親を対象としたコーチング講座に参加した。不安を抑えるためのポイントなどを学び何とか受験までたどり着いた。
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朝比奈あすかは親たちの悩みを本当によく分かるといい、美咲さんが異常な心境と仰っていたが、正にそういう感じになるのが実体験がある、中学受験の保護者は孤独なのに、スマホには情報が溢れていてマイペースを貫けない、そういう怖さがあるという。自分の気づきについて後から言えることだが、親の欲や心配、感情は子どもに押し付けないほうがいい、親の感情で子どもを動かさないように親はすごく気をつけるべきだなと思う、と話す。森上展安は受験教育には答えがあってそれにとにかく正解しなくてはいけないと思い込んでしまう、今必要なのは自分で問いを立ててそれを深めていくという探究的な活動なので、繰り返しトレーニングをしないといけない、ある意味長いスパンで考えないといけない、などと指摘した。例えばヨーロッパでは大学までみんな無料で、良いところを学んで日本はもう少し社会も国も教育にお金を投じて子どもを見守って育てていくという方向ではないと、ちょっと今の受験に偏った教育は厳しいかなと思うとした。