2024年10月18日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

首都圏情報 ネタドリ!
声をあげ始めた “境界知能”で苦しむ人たち

出演者
合原明子 
(オープニング)
きょうのテーマは…

今日は社会的支援からこぼれ落ちた人たちの生活を取り上げる。

キーワード
日本放送協会
オープニング

オープニング映像が流れた。

首都圏情報 ネタドリ!
”境界知能”で苦しむ人たち 当事者と家族が語る「暗闇」とは

茨城・筑西市で両親と3人で暮らす木村汐里さん。汐里さんが作文のタイトルにした「挟間にいる私」。それを示すのが18歳の時に受けた知能検査の結果。IQ=知能指数81。この数値は「境界知能」と呼ばれている。一般に知能指数は85から115が平均的で、概ね70を下回ると知的障害にあたるとされている。そしてその挟間に位置するのが境界知能の人たち。統計学上は日本の人口の約14%で7人に1人いるとされている。このうち日常生活に困難を抱えている人が少なくない。汐里さんが特に苦労しているのが計算。汐里さんは「1人での買い物は全部自分が計算しなきゃいけないので難しい」などと話した。小学生のころ通常学級で日々を過ごしていた汐里さん。しかし授業についていくことがやっとだった。中学生になると周囲との差を強く感じるようになる。毎日3〜4時間勉強しても成績は伸びず、教師からは努力不足ではないかと咎められてきた。汐里さんの成績が伸びないことを心配していた母・恭枝さんは、やればできるはずだと叱責することも少なくなかった。勉強に自信を持てなくなった汐里さんは中学校では不登校となり通信制の高校に進学する。この時期にコンビニや薬局などでアルバイトを始めたが、品出しやレジ打ちが思うようにできず辞めざるをえなかった。そして将来社会人として働く展望が持てなくなったという。次第に汐里さんは精神的にも不安定になっていった。一方で恭枝さんも娘にどう接したらいいか分からなくなっていた。汐里さんが境界知能だと分かったのは18歳の時。それ以降は恭枝さんとともに生活の困難を受け入れながら暮らしてきた。恭枝さんは買い物や移動の時の計画作りなど娘が苦手なことを全て手伝っている。恭枝さんは「境界知能ってだけだと支援も何もない。娘に何か頼るものがあったら安心できると思うが本当に心配」などと話した。そんな汐里さんが唯一自信を持てるのが文章を書くことだという。

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古荘純一境界知能消費税知的障害知能指数筑西市(茨城)青山学院大学
”境界知能”で苦しむ人たち なぜ見落とされてきたのか?

境界知能について古荘純一教授がスタジオ解説。境界知能はIQ71から84の人々だが、それよりもIQが低い70を切る人は知的障害として支援の枠組みがある。ただ、70を超えていても困難を抱える人がたくさんおり、1990年代から発達障害の概念が広がってきた。自閉症スペクトラム症やADHD、学習障害といったカテゴリーだが、2005年に発達障害支援法ができて支援の枠組みが決まった。しかし、それでも困難を抱えている人がたくさんいるという。今回、番組には境界知能で困難を抱える当事者からさまざまな声が寄せられた。木村汐里さんは「地図が苦手で初めての場所に行くときは事前に調べる。」などと話した。境界知能の特性として見聞きした情報をうまく処理できなかったり処理するのにすごく時間がかかるという。一見、困難さが周囲の人から見たら分かりにくくて理解されずに努力が足りないとか自己責任とされてしまいがち。ただ、境界知能に本当は起因するような困難さということではないが、二次的に友達関係がうまくいかなかったり引きこもったり不登校になるといった負のスパイラルに陥っていく困難さがある。木村恭枝さんは「もし上手くいかなくても、その子の特性で思いを巡らせ寄り添うことが大切。」などと話した。

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境界知能
”境界知能”の子どもたち 支援求める親たちの苦悩とは

東京都町田市で暮らす松成由美子さん。娘の深頼さんは知能検査の結果、境界知能だと分かった。小学6年生の深頼さん、音楽や体育は通常学級で授業を受けている。しかし、国語や算数は周囲についていくことが難しいため特別支援学級で勉強している。母が心配しているのは娘の将来について。高校以降、教育の支援がなくなり社会人になっても就労などの支援はない。そのため母が望んできたのは知的障害と認定された人に交付される療育手帳の取得だった。手帳があれば特別支援高校や障害者雇用枠に応募できる他、自立や就労を目指す訓練を受けることができる。母は療育手帳を取得できないかと行政に2度、申請したが知的障害に該当しないとして認定されなかった。しかし、母はこの結果に納得することができていない。手帳を交付する判定基準が自治体によって異なっているため。療育手帳の交付は都道府県と政令指定都市などがそれぞれの基準をもとに行っている。このうち知能指数の基準を70から74に設定している自治体はおよそ25%。75から79に設定しているのがおよそ60%。80以上はおよそ14%。東京都はおおむね75に設定している。この日、母は境界知能の子どもを持つ親の会に参加した。療育手帳の交付基準の違いに戸惑っている保護者たちが少なくなかった。こうした保護者たちの訴えを自治体はどのように受け止めているのか。東京都の担当者によると、IQだけで判断しているわけではなく専門の精神科医と話を聞いて障害の度合いについて判断するとしたうえで、東京都は国に対して統一の判定基準を定めるよう10年以上にわたり要請を出しているとしているという。

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三菱UFJリサーチ&コンサルティング境界知能新宿(東京)東京都東京都心身障害者福祉センター町田市(東京)療育手帳その他関連諸施策の 実態等に関する調査研究神奈川県
”境界知能”で苦しむ人たち あるべき支援の形とは?

療育手帳について厚生労働省は統一の判定基準の策定に向けて幅広く調査研究をしていくとしている。一方、福祉制度について研究している専門家、元上智大学教授・大塚晃さんは判定基準の統一化は必要だと考える。ただ、すでに支援を受けられている人に不利益が生じないようにしなければならないとしている。支援への道筋について古荘純一教授は「発達障害やLGBTQのように社会の認知や理解を広げることが必要。そのためには公的機関などによる実態調査を行い、法律的な支援制度の策定をしていく。」などと話した。

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厚生労働省大塚晃

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