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リッカシップは現役最後のレースで勝利で締めくくり、引退した。通算成績は54戦3勝。引退した競走馬の受け皿となり、恩返ししたいと奮闘する男性を取材した。
佐賀・江北町の北西部にあるCLUB RIOではポニーのジュジュ、現役を引退した2頭の競走馬が穏やかに暮らしている。代表理事の永松良太氏は競走馬を育成するゲームにハマっていたが、佐賀競馬場で実際の競走馬を目にすると、騎手を志すことに。だが、身長183cmと恵まれた体格は馬にとっては負担が大きい。そこで、厩務員として働くようになったなか、競走馬が骨折や故障で回復が見込めないと、苦痛から解放のため安楽死の措置が講じられるなど、華やかな舞台の裏の現実を知ったという。
22年のレースを最後に現役を引退したリッカシップはCLUB RIOでシップと呼ばれ、障害のある子どもたちの発達の支援に携わる。乗馬のリズミカルな動きは人の歩行運動に近く、バランス感覚が養われるという。シップも穏やかな性格になったという。ホーリーは食肉処分される予定だったが、巡り巡って永松氏が引き取った。22年秋、引退した競走馬のセカンドキャリアについて、支援の充実を求める内容の附帯決議を盛り込んだ改正競馬法が成立した。競走馬にとっては現役よりも引退後のセカンドキャリアのほうが長い。
CLUB RIOには現役の競走馬たちが休息、調整のためにやってくる。永松氏は毎朝5時頃から馬房を清掃し、餌を与えていて、すっかり朝型人間になったという。取材中、氏はCLUB RIOにいたマックスという馬について口を開いた。
CLUB RIOで最初に受け入れたのがマックスで、元競走馬。流鏑馬のイベントに参加するなど穏やかな余生を過ごしていたが、次第に寝たきりの状態に。永松氏にとっては天寿を全うさせたかったが、苦しませ続けるのは忍びなかったといい、安楽死のため獣医を呼ぶことにした。だが、マックスは安楽死させられることなく、24年3月9日にこの世を去った。馬の平均寿命は20年前後とされるなか、マックスは30年近く生きた。マックスの命日、永松氏は馬と人をつなぐことをテーマにしたイベントを初開催。
24年、佐賀競馬で引退競走馬を支援するイベントが開かれ、永松氏はパネリストとして参加。そのなかで、佐賀県民にとって馴染みのある神事である流鏑馬について語った。マックスの命日に開かれたイベントで流鏑馬を披露することになり、騎乗した永松氏は見事、的に矢を当ててみせた。
CLUB RIOでは毎月、ボランティアを招き、厩舎内の清掃、食事作りなどを行って貰っている。理事の荒巻恒人氏は塞ぎ込んでいた時に永松氏から誘われ、外に出るきっかけになったといい、今の奥さんとも出会えたと話す。
晴天に恵まれたGW、佐賀・武雄市で子供向けの乗馬体験が行われ、ポニーのジュジュが大活躍。仕事が一段落したのを察すると、ジュジュは芝生の草を食み、スタッフは「オン・オフの切り替えが素晴らしい」と称賛した。永松氏は地域の高齢者集会に呼ばれると、これまでの取り組み、馬の魅力についてプレゼンした。人生の喜怒哀楽は馬たちから教えて貰ったといい、馬たちのセカンドキャリアを充実化させるのに力を尽くしていきたいという。