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ロシアによる軍事侵攻以来、初めて米露の外相らが会談した。ウクライナの頭越しに交渉が進むことに反発が広がる。トランプ大統領、プーチン大統領のディールによって戦争は終結するのか。
ロシアの外務次官は「米ロ高官の会合が2週間以内に第3国で行われる」と発言した。小泉悠准教授は「2月12日の米ロ電話首脳会談が行われてから、凄まじい速度で物事が動いている」と話す。
2月12日、トランプ大統領はプーチン大統領と電話会談を行ったと発表した。密使をモスクワに送り込み、プーチン大統領と直接会談をしていたといい、会談後にロシアで拘束されていたアメリカ人が帰国した。尽力したのが中東担当特使のスティーブ・ウィトコフ氏で、不動産業を営む富豪。外交経験はないなか、同氏はガザ地区の停戦交渉にも携わっていて、ユダヤ教の安息日にネタニヤフ首相との面会を要求したという。なお、1期目に大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は「プーチン氏はトランプ氏に働きかけ、交渉が難航する理由をゼレンスキー大統領に押し付けるだろう。ウクライナの立場が危うくなる恐れがある」と指摘する。18日、トランプ大統領は記者会見でゼレンスキー大統領を批判した。歴史家のニーアル・ファーガソン氏は「トランプ政権内に様々な意見があり、結論を急ぐのは時期尚早」と語った。
小泉悠氏によると、軍事侵攻を受けているウクライナを見捨てるわけにはいかないという価値観とは一線を画し、アメリカの利益を重視するトランプ政権の誕生はロシアにとって好都合な展開だという。ウクライナは鉱物資源の権益を西側諸国に優先利用させることと引き換えに安全の確保を模索しているが、トランプ政権は過去の軍事援助の見返りとして利用したいという。歴史家のニーアル・ファーガソンは「トランプ氏は停戦を成し遂げることでノーベル平和賞を狙っている」、「中間選挙のために成果を出したいはず」などと推測する。
プーチン政権で首相を務めたミハイル・カシヤノフ氏曰く、停戦を急ぐトランプ大統領に対し、プーチン大統領は大きな野望を抱いていて、ソビエト時代のように2つの大国が世界の運命を決定づけたいという。ロシアのGDPの伸び率は4.1%で、軍事侵攻後、各地の軍需工場では24時間体制で稼働している。雇用は創出され、平均賃金も増加。市民の購買意欲は高まっている。志願兵の年俸は初年度、約880万円が支給され、平均月収で換算すると5年分に相当。一方、先月のインフレ率は約10%で、しわ寄せは年金生活者に及ぶ。ただ、カシヤノフ氏は現時点で大きな打撃はなく、ロシア優位の状況は続くという。
小泉准教授はロシアはトランプ政権の成立を好機と捉え、ウクライナ問題に限らず、幅広い目標を追求しようとしているとみる。現在の規模の軍事侵攻ならばあと2年は厳しいだろうが続けられるといい、焦って停戦交渉しなくてもよいという。都市部は景気好調で、高い年俸と引き換えに兵士を募っている。対照的に欧米の足並みは乱れつつあり、ロシアからすれば願ったりかなったりの状況だという。
北海道の北東にロシアの潜水艦基地があるが、小泉氏はレーダー衛星が捉えた写真から最新型の弾道ミサイル原子力潜水艦が増強され、弾薬庫の拡張も進んでいると分析する。24年9月、ロシアは日本海で軍事演習を行ったが、中国からも最新鋭の駆逐艦、補給艦が参加。北朝鮮軍の幹部も招待された。北朝鮮はロシア軍に弾薬に加え、弾道ミサイルまで供与しているといい、北朝鮮の専門家であるジェニー・タウン氏は「戦争が長引く限り、軍事協力はさらに深まるでしょう」と語った。北朝鮮の核開発に詳しいシグフリード・ヘッカー氏は北朝鮮は軍事支援の見返りに核兵器開発の支援を求める可能性を指摘し、「日本や韓国にもリスクとなるでしょう」と話す。
小泉准教授によると、軍事協力によって北朝鮮、中国、ロシアが連動し、日本にとって厄介な脅威になっている。周辺国に協力をあおぎ、安全保障ネットワークを拡張していく必要があるという。ウクライナに目を向けると、国民の犠牲と引き換えに抵抗を継続するか、極めて不利な停戦条件を飲むかという二者択一を迫られている。小泉氏は日本がそういう状況に陥ることを憂慮し、「信憑性、実効性のある抑止を持たないといけない」などと語った。
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歴史家のニーアル・ファーガソン氏は「私達は今、強者はやりたいようにやり、弱者はそれに従うという世界にいます」と語る。小泉准教授は「トランプ政権が軍事侵攻の終結に向けて意気込んでいて、ロシアにとっては5月の戦勝記念日に勝利宣言ができることになる。本当にそうなるのか、二大国の動きを注目したい」と話した。ウクライナではこの3年で40万人以上の兵士が死傷した。兵士だった旦那さんと死別したグナテュクさんは「資源取引が話題になるなんて心が痛みます」、「これは資源のための戦争なのでしょうか」と疑問を唱える。
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