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いま世界を席巻するJ−POPの多くはボーカロイドによる音楽がルーツになっている。Adoは、ボーカロイドは心の拠り所だと語った。日本発のボーカロイドカルチャーを育てたものに迫る。
オープニング映像。
タイで行われたYOASOBIのライブで観客は日本語の歌を合唱していた。Ayaseはボーカロイドを通して独自の表現を追求してきた。ボーカロイドの原点は2007年に発売された初音ミク。当時ニコニコ動画には初音ミクの歌声で作られた楽曲が次々と現れた。投稿者はボカロPと呼ばれ、プロアマ関係なく自由に音楽を発表した。ボカロPとして注目された米津玄師はメジャーシーンでブレイク。歌い手の中からもスターが生まれた。海外で聴かれた日本の音楽上位100曲の中でボカロカルチャーから生まれた曲は去年25曲もあった。中でも「愛して愛して愛して」は海外リスナーから熱狂的な支持を集めている。
2月にロンドンで行われたボカロPきくおのライブには熱狂的なファンが集まり、独自なダークな世界観が歌われた。生々しく暗い歌詞がリスナーの苦しみの受け皿になっていた。きくおは「初音ミクみたいなフラットに歌う存在がいるから入ってくるという言い方をされることがよくある」「ボカロがあるからこそ自分の苦しみを率直に表現しても許される」と話した。
ボーカロイドは音楽の枠を超え、苦しみを抱える人たちの居場所を生み出すカルチャーになっている。日本文化を紹介するインドのイベントで歌声を合成するソフトのワークショップを開いていた大学生ヴィジャイさんは、10代の頃にボカロカルチャーに出会って以来ボカロ曲を翻訳してYouTubeにあげている。思春期に男性に魅力を感じることを両親に伝えたが「娘を生んだわけではない。息子を生んだんだ」と理解されなかった。ヴィジャイさんは「愛して愛して愛して」を聞いて自分は独りでないと思えたと話した。
ヴィジャイさんが開いたワークショップに来ていた13歳のカーヴィヤさんは、いよわのボカロ曲「きゅうくらりん」は家族や友達にも言えない苦しみをすくい上げてくれたと話した。ボカロ曲を研究してきたザボロフスキ博士は、世界は複雑で大きくて普遍的な感情は受け皿になり得ない、ボカロ曲は誰もが心当たりのある小さな幸せや小さな悲しみを歌っている、ポップミュージックよりも現代の人の心に寄り添い「自分にも力がある」と感じさせると語った。博士がボーカロイドの声について調査をすると、その時によって声が違って聞こえると返ってきたという。博士は、初音ミクは“空っぽの器”で自分の感情を投影できると語った。ボカロファンが集まったメキシコのイベントでは、スクリーンに映ったキャラクターのパフォーマンス動画を鑑賞して声援を送っていた。一方で人間の歌手がカバー曲を披露するとトーンダウンしていた。10年以上のボカロのヘビーリスナーであるエイミーさんは、人間の声ではなく合成っぽさが残っているのが好きと話した。
ザボロフスキ博士は初音ミクが日本で生まれたのは日本固有の歴史や文化が関わっていると語った。伝統芸能を研究する横山教授は、余白を残すことで広がるものがある、隠れた月を美しいと思うのは趣味判断として受け継がれてきていると語り、余白文化の象徴として能楽を挙げた。ほとんどの場合主人公は能面をつけ、表情を見ることはできない。この余白によって観客は自らの苦しみを物語に重ね合わせることができる。
世界の人たちもボーカロイドカルチャーで自らの思いを表現し始めている。イギリスできくおのライブに参加していたリシーさんは、英語版初音ミクでオリジナル楽曲を作っている。中学生の頃に自閉スペクトラム症と診断され、人に自らの思いを伝えることに難しさを感じてきた。初音ミクの声を借りれば胸の内を表現できるのでは、と音楽を作り始めた。投稿した歌には世界中から共感の声が寄せられた。インドのカーヴィヤさんも、学校の友達に呼びかけてオリジナルの歌を作ろうとしていた。ヴィジャイさんもオリジナル楽曲の制作に取り組んでおり、タミル語のバーチャルボイスを自ら開発した。
エンディング映像。
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