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抗老化ベンチャーCEOのエリザベス・パリッシュさんは遺伝子を操作する最新の施術を受けた。年齢は54歳だが、遺伝子の検査では20代、細胞の検査では30代という結果だった。筋トレをしなくても筋肉が増え、力こぶを見せてくれた。がんになるリスクもあるが、 「私の体を通してどんなテクノロジーが有効か示したい」と語った。血液交換や幹細胞注入など、若さを維持する科学技術が次々と誕生している。ヒューマンエイジ人間の時代・第5集のテーマは「不老長寿」。
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「ヒューマンエイジ 人間の時代」はさまざまな欲望の謎に科学・文化・歴史などの視点から迫る。今回注目する人間の欲望は「不老長寿」。老いの宿命に抗う「抗老化」を取材した。
アメリカ・ロサンゼルスでシングルマザーとして3人の子どもを育てるローレン・セリグさん(49歳)の長男アトラスくんはまだ5歳。子どもの成長を見守るため若さを保つ努力を続け、毎日20~30種類の薬やサプリメントを服用している。最新の抗老化の施術「血しょう交換」を受けるため1500kmも離れた街シアトルを年に数回訪れる。栄養やホルモンを運ぶ体液「血しょう」を抜き取り、人工血しょうを注入する。費用は1回75万円。血液のオイル交換のようなものだという。血しょう交換のアイデアは悪魔の実験とも呼ばれた1957年のパラビオーシス論文まで遡る。パラビオーシスを施した若いネズミと高齢のネズミの血液を互いに循環させたところ、高齢のネズミが若返り、寿命が10%延びた。一方で若いネズミは老化が加速した。パラビオーシスはマッドサイエンティストの仕事と思われ一部の研究者しか注目してこなかったが、若いネズミの血しょうには細胞を若返らせる物質が豊富にあり、高齢のネズミには老化を加速する物質が多いことが突き止められた。人間にも同じ仕組みがあることがわかり、血しょう中の老化物質を取り除く「血しょう交換」が行われるようになった。
東京で行われた臨床試験の説明会に参加していたのはパティシエ・辻口博啓さん(58歳)。脂肪組織から取り出した細胞の卵“幹細胞”を1億個以上に培養し、点滴を使って体内に注入する。今後1年間で3回の点滴を行い、効果を確認する予定だという。一日でも長く仕事のパフォーマンスを落とさないようにしていくのが大事だと語った。
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最先端の抗老化技術を紹介したVTRが終わってスタジオトーク。抗老化研究の専門家・伊藤裕さんは方向性は正しいが、まだ発展途上にある。未承認の自由診療のため高額で、施術のレベルに差があるため注意が必要と解説した。
1972年にニュージーランド・ダニーデンの同じ病院で誕生した1037人の成長と老化を幼少期から現在に至るまで徹底的に追い続けたところ、見た目の老化に個人差があることがわかった。研究者が注目したのは遺伝子。遺伝子にはON・OFFのスイッチがあり、スイッチの切り替わりが老化の原因の一つとされる。スイッチの状態を調べることで体の老化速度を導き出せることがわかった。平均的な老化速度の人が1年に1歳ずつ年をとるとした場合、老化が最も早い人は1年に2歳も年をとり、遅い人は1年に0.5歳しか年をとらないことがわかった。
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事前に調べた鈴木亮平の老化速度を発表。1年に0.92歳だった。遺伝子検査で分かる肉体の年齢「生物学的年齢」は35歳で暦年齢42歳より若かった。遺伝的に老化速度が遅い人もいるが、運動や食事など生活習慣の影響が大きいという。これまで様々な抗老化の方法があったが、どれが本当に効果があるか分からなかった。老化を測る客観的な“ものさし”ができたことで、本当に有望な方法を選択できるようになったという。抗老化技術を競い合う国際的な賞金コンテストも始まっていて賞金は150億円。欧米では投資家が集まる抗老化分野のパーティーが開かれている。抗老化ビジネスの市場規模は今後右肩上がりで2034年には現在の2倍の約24兆円になるとみられる。
イスラエル北部にあるカフゼー洞窟から出土した12万年前のホモ・サピエンスの骨は死者を弔った最古の証拠だとわかった。高い知性を持つ祖先には死の概念があり、将来自分が死ぬことを理解していたという。「死にたくない」という欲望が芽生え、死に抗い始めた。チェコ・プラハにある500年前の薬局の建物には「不老不死の秘薬 エリクサー」を作ろうとした研究室が残されていた。近代になるとワクチンや抗菌薬の発明で乳児死亡率が低下、感染症で亡くなる人も急減したことから、1900年までは42.7歳だった平均寿命が2023年には79.1歳まで倍増した。寿命が延びたことで多くの人が「老い」を経験することになった。「老い」は長寿を追求した人間が自ら生み出してしまったジレンマだった。
遺伝子から推定される野生動物の生物学的な寿命(最大寿命)を紹介。ヒトは38歳。生物学的には若いと生殖に有利だが、ほかの動物は若さを保とうという認識はないという。社会の流行は若者を起点に生まれることが多く、企業が物を売るときは若者をターゲットにする。長く行きた老人が持っている知識が重宝された時期もあったが、皆が長生きになったことで老人の希少性は薄れている。抗老化の技術が進めば、平均寿命は100歳、多くの人が115歳で死んでいく社会になるという。あなたは100歳まで生きたいと思いますか?というアンケートで「思う」と答えた人は21.2%にとどまり、健康上の不安を理由にあげる人が多かった。がんや認知症など、老化により細胞や臓器の機能が低下して起こる病気「加齢性疾患」は寿命が延びたことにより悩まされるようになった。
パーキンソン病は運動機能をつかさどる神経細胞が急激に死滅する加齢性疾患。スウェーデン・ルンドに住むトーマス・マッソンさん(62歳)はパーキンソン病を患っていたが、肝細胞を脳に注入する臨床試験を受けた結果、ゴルフができるまで運動機能が復活したという。ノルウェーではアルツハイマー型認知症の臨床試験が進んでいる。細胞を若返らせる成分が豊富な「若者の血しょう」を輸血することで、神経細胞の死滅を遅らせ、新たな細胞を増やす試み。システン・ローセットさん(70歳)は8年前にアルツハイマー病を発症。半年前から臨床試験に参加し、4回の血しょう輸血を行った。半年前の記憶力検査では3つの単語しか思い出せなかったが、この日の検査では7つの単語を思い出すことができた。
抗老化の最大の目的は健康寿命を延ばすこと。健康寿命は日常生活に制限なく自立して生きられる期間。日本人の場合、平均寿命と健康寿命の差が男性は約9年、女性は約12年ある。鈴木亮平は抗老化にお金がかかることから、抗老化格差が心配だと語った。
糖尿病薬メトホルミンは1錠10円程度。糖尿病患者の生存率は健康な人より低いが、メトホルミンを服用している人は健康な人よりも高いことがわかった。さらにメトホルミンが心臓病・がん・認知症など加齢性疾患の発症率を下げることも確認された。アルバート・アインシュタイン医科大学のニア・バージライ博士は健康な高齢者を対象にメトホルミンを飲ませる臨床試験を始めた。臨床試験の結果が待たずにメトホルミンを飲み始める人も出てきた。コネチカット州・ウエストハートフォード町長のシャリ・カンターさん(66歳)もその1人。メトホルミン以外にも様々な薬が抗老化薬の候補として研究が進んでいる。
成長期間が長い生き物は寿命が長いため、寿命が延びると成長がゆっくりになる可能性もあるという。シルバー民主主義といわれる中、模範例があったら若い人は尊敬するし、そうなっていきたいという話題になった。地球の許容量は80億人程度という推計が多いが、2024年には既に80億人を突破した。欧州の平均的な生活水準を維持し、地球環境を守るには最大31億人という推計もある。
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