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釜ヶ崎の肖像 明日への3000枚
生活保護の近藤さん(75)は月11万円ほどをやりくりして暮らす。2年ほど前からがんで闘病し、再発の不安と闘っている。家族を捨てた父の記憶も写真もないという。父が好きだった船に乗り、父の故郷・小豆島を訪れ、自らのルーツを探った。
釜ヶ崎の公園では毎年8月に夏祭りが行われる。石津さんの写真館にも多くの人が訪れた。くも膜下出血で倒れた永井さん(61)はヘルパーの助けを借りながら何とか一人で生活している。孤独死した久保さんの写真は希望通り公園の祭壇に飾られ、身寄りなく亡くなった人たちの慰霊祭が行なわれた。釜ヶ崎ではこの1年で200人以上が亡くなった。労働者を支援する施設には引き取り手がない遺骨が眠る納骨堂があり、石津さんの写真が最期を見送ってきた。
孤独死した久保さんの写真と遺骨は愛知県の親族の元へ還った。昨年末の写真館には工藤さんが久しぶりに姿を見せた。家賃滞納で住まいを追い出されたという。近藤さんたちが1年の終わりに写真館で石津さんに撮影してもらって命を刻んだ。80歳になった石津さんは今年も撮影を続ける。1人ではないことを伝えるため撮影したみんなの写真を飾る。近藤さんは必ず写真を受け取りに来る。がんの再発は免れたという。
工藤さんは4畳半の部屋で新たな生活が始まった。大切なギターは処分されてしまったが、最低限の暮らしは満たされ、年明けには七草がゆを食べた。石津さんが撮影した写真は3000枚を超えた。表情にはそれぞれの人生が刻まれている。
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