千葉市に本店を置く千葉興業銀行がいちごの観光農園を立ち上げきょうオープンした。銀行がこのような観光農園を経営する背景にあるのは人口減少社会への危機感だという。地域経済が縮小していく中で地方銀行は本業の融資とは異なるアプローチに力を入れ生き残りの道を模索している。農園の責任者を務める目羅雅晴さんは営業を中心にキャリアを重ね支店長まで務めたあと、去年、突然、農園への出向を命じられた。託されたミッションはいちごを栽培するノウハウの習得。銀行の取引先には農業分野に関心を持つ企業が多くある。農園で得たノウハウを共有することで新規参入などの後押しにつなげたいとしている。農園の農業用ハウスには最新の温度管理システムが導入されている。温度や湿度、日射量などのデータをセンサーで測定し自動でカーテンを閉めたり、空調機を作動させたりする。農業などの分野で企業をサポートする力を高めることが将来的な自社の利益になると考えている。一方、地域への投資の呼び込みに力を入れている地方銀行もある。先月、房総半島を走る小湊鐵道といすみ鉄道の沿線にある宿泊施設や食品メーカーなどを集めたイベントが開かれた。発表されたのは、10の事業者と鉄道会社が参加するクラウドファンディングの立ち上げ。新商品の開発や体験ツアーを開催する資金などとして合わせて1200万円を募っている。これを主導したのは千葉銀行の小川利幸さん。地域経済を広く活性化させるにはクラウドファンディングが最も有効だと考えた。小川さんは鉄道会社の社長とともに投資を呼び込めるような事業の発掘に取り組んでいる。この日、訪れたのは房総半島の中ほどにある牧場。ジェラートなどの加工品の商品開発を進めている。広く投資を呼び込むため作り手の思いなどを発信しようと牧場の担当者とアイデアを出し合った。資金を提供するだけでなく地域の魅力を高めるために事業者とともに汗をかくこと。それが今、地方銀行に求められている。金融業界に詳しい専門家はこうした取り組みを長期的に継続できるかが重要だと指摘している。地域とともに歩む地方銀行が生き残るには地域経済の発展は欠かせないといえる。2つの銀行のように地方銀行が融資以外の事業に乗り出すケースは各地で増えているという。