エコノミスト・崔真淑さんに聞いた。総裁選の争点にもなっている給付付き税額控除だが、これは所得に応じて給付したり、所得税を控除したりする家計支援策の1つ。例えば通常の税額控除は所得税などの税額から一定額を差し引くが、払っている所得税が控除額を下回る低所得層の人に対しては、恩恵を受けきれないという課題がある。なので制度によっては納税額がゼロでも現金給付も可能で、カナダやイギリスでは貧困対策としても実施されている。また、アメリカでは就労促進型の給付付き税額控除が実施されており、2023年は約2300万世帯に総額約570億ドルが給付されるなど、世界では様々な形で導入されている。例えばアメリカのケースでは、1人親世帯において就労促進効果はあったことや、子どもの貧困率は2020年の9.7% から、2021年には5.2%へと大幅に減少させる効果があったという報告がある。同様の効果が様々な国にも報告されているだけに、家計が困窮している層への影響だけではなく、自立を促すための施策としても効果はあるよう。ただ副作用も報告されている。給付金が所得が増えるに応じて段階的に減るということはあるので、それが新たな就労意欲の壁になるかもしれないという。子どもの貧困に対してに日本は無縁と考える人が多いかもしれない。しかし今や日本は子どもがいる世帯の貧困率はOECD平均よりもやや低いという水準で、1人親世帯では44.5%と、OECD最悪水準。こうした課題をクリアするためにも非常に良いと思っている。ただ課題もある。日本の雇用者は年末調整中心で、確定申告をしない方が多いので、そうした方々へどう到達させるのか。そして財政が厳しい中で、余計な条件や制限をかけない税制にするためにも、複雑にせず、ここは大きな決断をして欲しいとは思っている。
