山梨大学のワイン科学研究センターでは70年以上にわたって学生たちがワインやぶどうについて学び研究してきた。ことしからは初めて販売を目指すワイン造りを始めていて、9月中旬には山梨市内の畑で学生たちがワイン用のぶどうの収穫をしていた。収穫されたぶどうは甲府市内の山梨大学の施設に運ばれ、仕込み作業が始まった。山梨大学ワイン科学研究センターで学生たちを指導している鈴木俊二教授は植物の栽培技術などが専門で2006年に山梨大学に着任したが、当時はワイン好きではなかった。鈴木教授が今、力を入れているのは温暖化に対応できるぶどうの開発。赤ワインの場合、温暖化の影響は色に現れる。鈴木教授によると夜の気温が25度以上になると赤ぶどうの場合、色素成分のアントシアニンが生成されずに色づきが悪くなり、醸造しても薄い色の赤ワインになってしまう。猛暑が続いたことしの夏も県内のワイナリーやぶどうの生産者から相談が寄せられたという。こうした課題に向き合おうと鈴木教授は今、アントシアニンが蓄積しやすい品種などを使った交配で暑さに強い新たなぶどうの開発を進めている。こうした山梨大学での取り組みをより多くの人に知ってもらおうと鈴木教授は新たな取り組みを始めた。その名も「シン・山梨大学ワインプロジェクト」。販売用ワインの醸造に関わる費用などのためクラウドファンディングで寄付を募ると、2か月間で目標金額の2倍近い支援が集まった。一方、新たなぶどうの品種の開発には時間が必要で鈴木教授は未来の担い手の育成にも力を入れている。70年以上の歴史が刻まれた大学のワインセラーには未来の学生の棚も用意されている。