ブータンはこれまで環境保護を重視した上で文化や経済の振興に取り組んできた。しかし今気候変動によって人々の暮らしが脅かされている。そうした状況を知ってもらうためブータン国王が発案したのが「ウルトラマラソン」。世界の選手達に国内で起きている異変を体感してもらおうというもの。舞台はヒマラヤの山岳地帯で世界のトップランナーが出場する。16人が総距離186キロを5日間で走る、世界一過酷なレースとも言われている。気候変動がもたらす危機を伝えることがレースの真の狙いだとトブゲイ首相が語る。コースには地球温暖化の影響で形成され、今も水量が増え続けている氷河や、1994年に氷河湖が決壊し洪水被害が起きた場所を通る。1994年の洪水では21人が死亡。今も氷河湖の決壊は各地で発生している。ブータンでは上流に2つの危険な氷河湖があり、決壊した場合1994年の4倍の規模の洪水が起こるとされている。今も気候変動の最前線で暮らしを営む人達がいる。5日間で選手達は気候変動の影響を肌で感じた。選手らはSNSでレースで得た経験などを伝えている。去年の世界の平均気温は記録が残る1850年以降最高で、このままだとブータンは今世紀末までに氷河の75%が消失するというデータもある。