EU設立の影の立役者とも言われ、ウクライナ侵攻についても2016年の著書で警告していたフランスの思想家・ジャック・アタリ氏へのインタビュー。「Q.ウクライナと中東で2つの戦争が続いている。2024年をどう見ているか」「A,事態は徐々に深刻化して制御不能になってきている。この先はさまざまなことが起きる可能性がある。イスラエルが核関連施設を狙った攻撃をするかもしれないし、イランの指導者の暗殺などもあり得る。イスラエル存続にはパレスチナ国家の樹立を認める以外に道はない。独裁国家と民主主義国家が隣り合っていて文化的に似ている場合、独裁国家は戦争を仕掛けざるを得ない状況になる。なぜなら、独裁者を打ち倒すような思想が民主主義国家から入ってきてしまうから。これは歴史上繰り返されてきた法則で、ロシアとウクライナがこうなることは避けられなかった。そう考えると中国と台湾の衝突も避けられないことになる。長い歴史を見ると、独裁国家は最後には倒れる。国民は自由を手に入れ、最終的には民主主義が勝利する。米大統領選でのトランプ氏の勝利は非常に大きなリスクとなる。米国が民主主義の“灯台”でなくなると、世界の民主主義は脅かされることになる。そのときこそ、ヨーロッパと日本が民主主義の明かりを引き継がなければならない」「Q.日本には何が必要だと思いますか?」「A.日本の文化、死生観、礼節、イノベーションや洗練さは、絶えず国際社会にプラスの影響をもたらしている。日本の課題を一つ挙げるなら“女性の役割”である。女性が社会のリーダーやさまざまな職種に就けばもっと貢献できる。いま世界を見渡すと、世の中を変える最も大きな力は“女性”である。前回、トランプ氏の再選を阻んだのも、イランで体制に立ち向かっているのも、イスラエルで政権に対抗しているのも女性である。女性はあらゆる戦いの最前線にいる」。また、今回のインタビューの中でアタリ氏は、私たち一人ひとりが世界の未来を担う当事者としての自覚を持つべきだと繰り返し強調した。