給食事業についてインドネシアの国民の評価は高いと言える。国内の複数の調査会社が1月に実施した調査では9割の人が「支持する」と回答している。プラボウォ大統領も強力に推し進める方針で、当初2029年までに全国で給食を提供することを目指していたが、今年に入って年内までにと目標を一気に4年も前倒しした。現在、給食が提供されているのは都市部が中心だが、世界最大の島しょ国であるインドネシアで地方の島々にまで事業を広げていくには調理施設や人材の確保、衛生管理などの一層の困難も予想される。地元メディアによると、今年5月までに全国で17件の食中毒の発生が報告され、中には入院を余儀なくされた子どももいる。プラボウォ大統領は給食事業を国の将来を担う子どもたちへの投資と強調しているが、専門家は政治的な狙いも透けて見えると指摘している。立命館大学・本名純教授は「国民、特に低所得者層の支持を確保していくかというところにポピュリスト的な政策の戦略が非常に色濃く存在していて、この5年間の彼の人気度を維持していくための“装置”でもある」と指摘した。プラボウォ大統領は社会政策を非常に重視している印象。給食事業だけでなく無料の健康診断や安価な住宅の提供など国民受けの良い政策を矢継ぎ早に打ち出している。一方で、今年3月には国軍法の改正案が可決され、軍人が兼務できる省庁や公的機関の数を増やすなど軍の役割が拡大された。プラボウォ大統領はかつて軍の最高幹部として独裁的なスハルト政権を支え、政権末期には民主活動家の拉致事件に関与したとして軍籍を剥奪された過去を持っている。当時を知る人たちなどからは懸念の声も上がっている。