甲子園で行われる夏の全国高校野球の地方大会に向け、練習に励む球児たち。東京都内の特別支援学校の生徒が、西東京大会に出場することが決まった。特別支援学校の単独チームとしては、全国でも例のない初めての出場。青鳥特別支援学校ベースボール部は、4人の先生に見守られながら、週4日3時間ほどの練習に励んでいる。部員は12人。単独でチームを組めることになり、地方大会出場が決まった。全員に軽度の知的障害がある。青鳥特別支援学校ベースボール部・白子悠樹キャプテン(3年生)は、手足の筋肉が徐々に委縮する難病もある。白子キャプテンは「最後なので試合には出たい」と語った。白子キャプテンは、中学校では運動部ではなかった。第1希望の野球部への入部を断られたから。野球部を作った青鳥特別支援学校・久保田浩司監督は、みずからも高校球児だったこともあり「障害がある子どもにも実戦の舞台に立つ経験を味わってほしい」と言う思いがあり「“対等に勝負できるんだ”という強い信念がある、練習さえしていけば同じフィールドで勝負できる」と語った。“対等に勝負できる”との強い信念は、ある実体験から生まれていた。34年前、養護学校の教諭になったばかりのころ、1人の生徒が「キャッチボールをしたい」と声をかけてきた。しっかりと向き合ってボールの握り方から教えた久保田監督。上達していく姿を今でも覚えているという。3年前、この学校に赴任した久保田監督が出会ったのが、中学時代、野球部に入ることができなかった白子キャプテンだった。久保田監督は「生徒のやる気をくんであげないと教員ではないなと」と語った。こうして出来た野球部。選手どうしの距離を十分取ってキャッチボールを行うなど、安全対策を取ったうえで活動。この春、6人の1年生が入部。野球部があるという理由でこの学校を選んだ生徒もいる。実戦経験が少ないため、夏の大会に向けて、試合の状況を想定した動きを、何度も繰り返している。休みの日も、自主練習のためにバッティングセンターに通う白子キャプテンは、野球ができる喜びをかみしめて全力プレーを誓う。