アジアの政治や経済について討議する日経フォーラムアジアの未来がきのう都内で開幕した。岸田総理大臣は演説で、ASEANと共同で、今後5年間で10万人の高度デジタル人材育成を目指すと表明。岸田総理は、デジタル人材の不足はASEANも共通課題で、理系教育の強化や社会人のリスキリング、人材の相互交流を深めていくことが重要だと訴えた。また次世代の自動車産業に関して共同戦略を初めて策定し秋に公表するとも明かした。さらに、日本主導でアジアの脱炭素を目指す連携枠組み「アジアゼロエミッション共同体」をめぐっては8月にジャカルタで第2回閣僚会合を開催すると語った。日経フォーラムアジアの未来では、各国の政治経済界の要人が登壇、テレビ東京などのインタビューに相次ぎ応じた。来年ASEANの議長国を務めるマレーシアのアンワル首相は、域内の優先事項は経済だと強調しデジタル化が成長の原動力になるとの見方を示した。アメリカに世界で最も多くの半導体を供給しているマレーシア。米中対立によるサプライチェーン再編の動きを背景にソフトバンクグループ傘下の半導体設計会社、アームの誘致を決定。さらにマイクロソフトは今月、マレーシアでAIとクラウドサービスの強化に今後4年で22億ドルおよそ3400億円を投資すると発表。アンワル首相もナデラCEOと面会し歓迎した。一方、注目を集めたのは、中国の中央銀行に相当する中国人民銀行で、およそ15年にわたって総裁を務めた周小川元総裁。周元総裁は人民元の国際化を推し進め、ミスター人民元との異名を持ち、政策通でもある。不動産不況が深刻化する中国経済について周元総裁は「不動産市場は政策決定者らの予測より速いスピードで下落した。国民の生活水準を向上させるためには投資や都市化のためのインフラがまだ必要で、潜在的には高速道路や鉄道を含む多くのインフラも必要。現状は短期的、中期的な市場の調整で他の多くの国で既に興っていること。したがって長期的には楽観的になる必要がある」などとコメントし、「政府や公的機関が担っていた不動産の販売が、35年前から市場で売買できるようになった」と指摘した。現在の不況は中国にとって初めての挑戦になると説明した上で長期的には克服できると強調した。そのために必要なのは、かつて不動産バブルの崩壊に対応した日本をはじめ、他国の経験から学ぶことだと言う。一方、中国をめぐってはアメリカやヨーロッパが自動車や鉄鋼などの中国メーカーが国内に過剰の設備を抱え、不当に安い価格で輸出することで各国の製造業に打撃を与えていると批判している。これに対し周元総裁は生産設備は過剰ではなく、環境分野の市場拡大にとって必要だとする考えを示した。