ロンドン支局の大庭雄樹支局長に聞く。政権交代の可能性が高まっているということだが、与党保守党の苦戦の原因はなんだろうか。背景には、多くの有権者が暮らしがよくなったと実感できていない現実がある。インフレによる生活費の高騰に賃金の上昇が伴っていないほか、公的医療サービスを受診できるまでの待ち時間が平均で3か月半に上るなど国民の多くが暮らしに不安を感じている。スナク首相はおととしの就任以来、インフレ率を下げたと強調しているが、有権者が見てきたのはスナク首相のそのさらに前から続く保守党政権のふるまい。具体的には、ジョンソン政権が主導したEUからの離脱、新型コロナ対策の中、首相官邸でパーティーが繰り返されていた不祥事、それにトラス政権が招いた経済の混乱など。スナク首相は選挙戦の最終盤になってかつて自分が追い落としたジョンソン元首相に応援を仰ぎ、右派の有権者の引き止めになりふり構わない姿勢を見せている。しかし取材していても保守党への失望、不信感というのは根強く、国民は選挙を通じて厳しい評価を下すことになりそう。