バングラデシュ・シェイクハシナ首相が退陣に追い込まれ国外に逃れた。1947年生まれの76歳。政治家の家庭で育ちみずからも学生時代から政治活動に積極的に関わってきた。バングラデシュはそのハシナ氏が20代だった1971年にパキスタンから独立。父親のムジブル・ラーマンは最初の首相に就任した。「建国の父」の長女としても知られてきた。性格については父親譲りの“強い個性と信念の人”とも評される。1996年に初めて首相に就任。その後、一旦下野するが2009年からは15年にわたって長期政権を率いてきた。ハシナ政権の下でバングラデシュの経済発展は勢いを増した。世界銀行の2019年の報告書では15年で2500万人が貧困から抜け出したとしている。今では有望な投資先としても注目されている。2022年のGDP成長率は7%を超え日本企業も現地に300社余りが進出。一方でハシナ氏の政治手法を巡っては強権的だとの批判が野党や人権団体などから出ていた。アムネスティ・インターナショナルは、拘束された人の行方が分からなくなるケースや死亡するケースが増えているとして懸念を示してきた。今年1月の総選挙は野党側や人権活動家が次々に拘束される中、野党側がボイコットする事態となった。こうした中でウクライナ侵攻の影響による物価の上昇や若者の雇用不足といった問題も加わり国民の不満がいわば爆発した形となった。軍や野党関係者などが暫定政府の発足に向けて協議を進めているが、デモ隊の一部が暴徒化していて安定を取り戻すことが急がれる。また、外交面ではハシナ氏はインドの支援を受けながらもインドが強く警戒する中国とも関係を築いてきた。波紋は国内にとどまらず周辺国にも広がっている。