東京・国立市にそびえる10階建ての分譲マンションは全18戸で、価格帯は7000万円台が中心。来月から購入者に引き渡す予定だった。しかし、急きょ、解体されることになった。マンション近くの飲食店の店長は「もったいないと思います。せっかく作ったものを壊すっていうのは」と話す。近隣住民から上がっていたのは景観への懸念だった。国立市民は「入り口からずっと富士山が見えてたけど、それが見えなくなっている」と話す。マンションが建設された目の前の「富士見通り」。4年ほど前に「富士見通り」で撮影された写真を見ると、その名の通り、道の正面に富士山を望むことができる。しかし、去年、マンションが建設されると、富士山の半分ほどが隠れて見えなくなってしまった。近隣住民は「日常的にこの景色を見てた者としては、非常に残念なこと」と話す。建設した積水ハウスは、マンション周辺の影響について、着工前に住民との話し合いを行っていた。当初、11階建ての予定だったマンションだが、市民からの反発を受け10階建てに変更。しかし、これにも多くの市民が反発し、陳情を受けた市長が、積水ハウス側にさらなるボリューム感の低減などを求める指導書を交付した。これを受け、さらに2mほど低くする変更案を出したものの、反発の声は収まらなかった。一方で、市の基準や法令は満たしていたため、去年1月にマンションの建設が始まった。それからおよそ1年半、完成を間近に控えた先週に事業中止と解体が決定。積水ハウスは「建物周辺の影響に関する検討が不十分であった」と話し、契約者には順次、返金などの対応を行っているという。