新しい国づくりを進めるシリア。イスラエルとも接しているが、そうしたエリアに位置するゴラン高原である動きが起きている。戦略的要衝とされるゴラン高原の北部の町マジダルシャムスに今月19日、NHKの取材班が入った。町の広場には、アサド政権を崩壊させたシリア解放機構が、新たな国旗とする旗が掲げられていた。ゴラン高原は1967年の第3次中東戦争の結果、イスラエルが占領した。ゴラン高原の人口5万5000人ほどのうち半分以上は入植したユダヤ人だが、シリア系住民もおよそ2万5000人が暮らしている。シリアとイスラエルの停戦を監視するPKO(平和維持部隊)が展開し、日本の自衛隊も1996年から2013年まで参加していた。アサド政権が崩壊したことについて現地の住民は「(うれしくて)泣いた」と語った。一方で懐疑的な見方を示す人も。シリアが新たな国づくりを進める中、ゴラン高原で実効支配の強化を図っているのがイスラエル。潜在的な脅威への自衛的な措置として、ゴラン高原でシリアとの境界に位置する緩衝地帯に侵入し占拠している。イスラエル軍はヘルモン山頂を占領して部隊の駐留を続けている。今月17日には、ヘルモン山の山頂をネタニヤフ首相みずから訪れた。標高2800メートル余りあり、シリアの首都ダマスカスを見下ろす位置にある。イスラエル政府は15日、ゴラン高原の入植活動を強化するため人口を倍増させる計画を承認したと発表。地域の教育支援や再生可能エネルギー施設の整備などに今後、4000万シェケル、日本円で17億円の予算を投じるとしている。イスラエル軍による緩衝地帯への駐留について、国連のグテーレス事務総長は「国連の平和維持部隊のほかに緩衝地帯に軍隊は存在すべきでない」と述べた。ゴラン高原北部の町マジダルシャムスのアブサレフ町長は「住民はみな平和を望んでいる」と述べた。