自分の汗のにおいが気になるという20代の男性は高校生の頃からわきがに悩んできた。常に不安がつきまとい汗のにおいをできるだけ消す努力をしてきたとのこと。お金や手間をかけ対策を続けているが、それでも職場でのにおいが気になり仕事に集中できないこともあるという。この男性は体質に加え、においが日常生活に支障をきたしていることからわきがの病名である「腋臭症」と診断されている。そのためわきが治療のある専門外来がある大学病院に通っている。わきがはアポクリン腺から毛穴を通って出た汗が皮膚に付着した細菌に分解されることでにおいが発生する。わきがの人はこのアポクリン腺が人より発達し、汗の量が多くなるのでにおいが発生しやすいという。先ほどの男性のように悩んでいる人にはいくつかの選択肢があり、代表的なのはアポクリン腺を取り除くという手術である。保険が適用され費用は5万円程度で再発の恐れはほぼないが入院や術後のケアで1か月近く安静期間が必要になる。一方、男性が選択したのはわきから出る汗の量を減らすボトックス注射でわきの多汗症も発症している場合には保険が適用される。メリットは時間がかからないことで男性は仕事の関係で安静期間が取れないため、この治療法を選んだ。約半年ごとに注射を打つ必要があるが、効果を実感できているという。またわきが対策には新たな選択肢も生まれようとしており、その鍵となるのがスタフィロコッカス・ホミニスというブドウ球菌の一種である。この菌はにおいの発生に深く関わっていることが分かってきたという。研究を行っているのは大阪公立大学などの研究チームでスーパーコンピューターに成人男性のわきから採取された全ての細菌のDNAを解析させ、突き止めた。さらにこのチームは必要な菌は殺さずにスタフィロコッカス・ホミニスだけを狙い撃ちする阻害剤の開発にも成功した。現在はこの技術を活用し、薬やデオドラント商品を新たに作れないか企業と研究を進めている。