1788年に御徒の次男として江戸に生まれた菊池容斎。狩野派の絵師・高田円乗に入門し38歳のときに御徒の職を辞して画業に専念。円山四条派・土佐派・浮世絵などを独学で習得した。前賢故実は全10巻、20冊からなる畢生の大作。日本の偉人571名の肖像と正伝を記したもので日本の歴史上の人物を大系的に視覚化した点において極めて画期的だった。あまりに膨大だったため出版を申し出る版元はなく日の目を見たのは20年以上経た1868年。前賢故実は唯一無二の手本と崇められ明治以降、前賢故実を学ばない歴史画家は居ないとまで言われた。1878年に91歳で他界し、その後は月岡芳年や橋本雅邦らが前賢故実を手本に傑作をものにして行くと、菊池容斎の名は次第に忘れ去られて行った。依頼品の菊池容斎の掛軸十二幅には日本の四季が描かれている。