2011年に被爆者の手記などを集めるため「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」が発足された時の呼びかけ人の1人である大江健三郎さんは執筆活動などを通じて核兵器廃絶を訴え続けた。団体では約2万点の資料を収集していて、今回見つかったのは1965年に大江さんが書いたものだ。日本被団協が被爆者の体験記などの資料収集を始めるのに合わせて当時の知識人たちに協力を呼びかけている。この中で被爆者が体験を話すことについて“最もストイックな自己証明”などとつづられており、ひとりの知識人が自身と人類の運命について考えようとすれば原爆を体験した人々について思い出さざるを得ないはずなどとも記されていた。専門家は、当時は被爆体験を証言するような状況ではなく、罪の意識を抱えて行き続けているのが大きく、それでも勇気を出して語り始めた人がいた時に大事なことだと知識人もしくは小説家の立場で勇気づけるような最初の歯車をまわすところを表す貴重な手紙と述べた。文書を見つけた団体は大江さんの思いを継承していく考えだ。