房総半島で駆除された野生動物を芸術作品にするアート展が開催されている。このアート展の仕掛け人、大阪谷未久さんは去年、千葉県館山市でレザー工房を設立した。大阪谷さんが作る革製品の材料となっているのが、駆除された野生動物の革。中国などに生息する鹿の仲間で特定外来生物のキョンの皮は「マシュマロのような触り心地」と話していた。製品作りにはこだわりが詰まっている。染色には天然の染料を使用しており、スマホケースやブックカバー、小物入れなど製品は30種類以上に及ぶ。野生動物ならではのかすり傷もそのまま生かしている。車の運転用の手袋も製作した。房総半島では今、野生動物による農業被害などが問題となっている。キョンは20年ほど前、千葉県内の観光施設から逃げ出し野生化。年々増え続けて今では8万頭以上が生息していると推計されている。駆除された動物の革を活用する取り組みのきっかけはボランティアで訪ねた農家との出会いだった。動物被害や人口減少など地域が抱える問題を知った大阪谷さんは4年前、都内の勤め先を退職し南房総へ移住。2年間、革製品作りを学びレザー工房を開いた。地域の課題を多くの人に知ってもらうために百貨店でワークショップを開いたりアート展を開催したり精力的に動き回っている。さらに大阪谷さんは空き家を購入し、皮の加工や保管に使うほかワークショップ体験や農業体験の拠点にして人が集う場所にしたいと考えている。大阪谷さんの革製品は、県のふるさと納税の返礼品になったり地元のホテルで使われたりとか活動を後押しする輪も広がりつつあるという。