福岡県東峰村では気象庁が「線状降水帯」の予測情報を出したこともあり、不安を感じた住民が役場に来ていた。気象庁のホームページに加え災害予測の説明に職員が活用していたのが、九州大学が開発した「市町村災害対応総合システム」。東峰村では7年前、土砂災害や河川のはん濫などの豪雨災害で3人の犠牲者が出た。東峰村では、気象庁や県の情報に加え、6時間先の予測ができるこのシステムを使って「高齢者等避難」や「避難指示」を出す判断をしている。AI(人工知能)を活用するこのシステム、災害が起きる前に被害を予測していのちを守ろうと、九州大学の三谷泰浩教授が開発。5年前に開発されたもので、降水量や洪水、土砂災害の被害などを地図上に色分けして表示する。川が決壊した際の「6時間先までの浸水範囲」の予測について、通常の計算であれば数時間かかるところ、AIを使うことによって数分ではじき出すことができる。さらに、こうした被害予測と「どこにどれくらいの年代の人がいるか」の情報を合わせることで、「いつ避難が困難な状況になるのか」を予測することも可能。気象庁が出しているキキクルに比べて、細かい地区ごとに予測するのも売りの一つ。三谷教授は、一刻を争う災害の現場でAIの活用は意味があるとする一方、最後は各自の判断が必要だと強調する。また、住民が実際の被害情報を写真で投稿することも可能。災害がどこで起きているのか素早く情報を収集できるため、職員の人数が少ない村にとっては大きな助けとなっている。