道の駅などで売っている手作り漬物がピンチになっている。食品衛生法改正で漬物を作って売る場合には営業許可が必要に。この3年は経過措置期間だったが、今年6月から完全施行となる。秋田を代表する漬物といえばいぶりがっこ。大根を囲炉裏に吊るして燻、米ぬかで漬け込んだ郷土料理。地元の道の駅では月3000本も売れる看板商品。実はここで売っているいぶりがっこのほとんどが個人の家で作られたもの。生産者自らが納品に来ている。生産者は「いぶりがっこ作りは趣味だし生きがい。商品がなくなっていると嬉しくて」と話した。しかし、今回の法改正は生産者たちに今後も作り続けるかどうかの決断を迫るものだった。いぶりがっこの販売を断念したという高橋一郎さん。実は今回の法改正では国際基準に沿った衛生管理ができる作業場が必要になる。例えば自宅と作業場は別、床や壁は指定の素材、手のひらが直接触れない蛇口の完備など。年齢を考えるといつまで続けられるのか悩んでいた高橋さん。改修費用が高額なこともあって辞めることにした。「体力的にも大変になってきたので潮時かな」と話した。今回の法改正に伴って秋田県が生産者に調査を行ったところ、「営業許可は取得しない」と答えた人が約4割に上る事態に。そこで県や市では法改正の対応に必要な設備改修の費用を最大1000万円まで補助することにした。担当者は「いぶりがっこは食文化という一面と生産者の生きがいという一面もある。ずっと続いていけるように行政も少しでも力になれたらいい」と話した。補助金を活用して実際に作業場を改修した野中さん夫婦。むき出しだった天井や壁を全て改修した。水回りも新たに設置。手のひらが直接触れないレバー式の蛇口も完備した。「自己資金だけではなかなかそこまではやれなかった。これで安心して出荷できる」と話した。