広島大学大学院の研究室を取材。統合生命科学研究科の堀内浩幸教授が研究しているのは、卵アレルギーの主な原因となるたんぱく質を含まない卵。11年前から大手食品メーカーなどと取り組む。消費者庁の全国調査によると、食物アレルギーの原因として最も多いのが鶏卵で、全体の3割以上を占める。小さな子どもに多く重篤な症状が出る。原因は卵に含まれる複数のたんぱく質。厄介なのは「オボムコイド」だ。熱に強く加熱してもアレルギーを引き起こしてしまう。堀内さんは「オボムコイドを含まない卵なら加熱により卵アレルギーの人でも食べられる」と考える。それを実現したのが”ゲノム編集”とよばれるDNAの配列を編集し生物の遺伝情報を書き換える技術だ。一般的に外来の遺伝子を入れる遺伝子組み換えとは異なり、狙った遺伝子だけを働かないようにできる。精子や卵子になる前のニワトリの細胞にゲノム編集を加えオボムコイドを作らせないようにし、その細胞を別の受精卵に入れてふ化させる。成長したニワトリを複数回交配させることで体内でオボムコイドが作られないニワトリが誕生する。これらが産んだ卵にもすべてオボムコイドは含まれていないという。ただオボムコイド以外のアレルギーを引き起こすたんぱく質は含まれたままだ。そのため卵アレルギーのある人に提供するには加熱が必要だ。この研究は、これまで卵を食べられなかった人たちの食の選択肢を広げると期待されているが安全性が懸念される。現在、神奈川県の病院で臨床研究に向けた準備が進み、卵アレルギーのある人に食べてもらい有効性を確かめる。スタジオでは臨床研究と今後について説明。