佐々木さんが取り出したのは檜皮の束。1束が約120枚。ひのきの森で樹齢80年以上の木から1枚1枚手作業で皮を採取する。半年間乾燥させたのち専用の檜皮包丁を使って同じ大きさに成形。それを120枚重ね合わせて1束が完成する。全部で2500束を使う。材料を作るのに時間がかかるので1年程前から用意する。現場を引退した年配の職人が材料を絶えず作っていくという。ずれないよう水で濡らした檜皮を下の段と1.2cmずらして並べる。上に重ねる際は半分ずつ横にずらし隙間を埋めるように並べる。規則的に並べることで雨風にも強い美しい反りを生み出す。竹くぎを40本程まとめて口の中に入れ、舌を使って1本ずつ出していき屋根金づちで打ち込む。あまりにも早すぎて何をしているか分からないのでスローでもう一度。竹くぎを口に入れた田中は「竹の味がする」と話した。一連の動作を右腕だけで行うのは左手で次の部分の高さを確認しながら打つため。1本打つのに1.5秒。2か月後、最上層の屋根が蘇った。きれいに仕上がるように再調整する。2年後すべての屋根が生まれ変わり再び私たちの前に姿を現す予定だ。田中は「これまで16回の人たちのバトンを受け継いでいるという話を聞いて、それが国宝たるゆえんだと思う。解体は終わりじゃない、始まりなんだな」と話した。
住所: 山口県山口市香山町7-1