堺の包丁は「なにわのうまいもん」を生み出してきた。昭和21年創業、おぼろ昆布で知られるこの店。三代目・郷田光伸さんのこだわりは高級品として知られる北海道・函館近海の真昆布。厚さは約0.02ミリ。これに欠かせないのが昆布専用の包丁。刃先をなでるとわずかに引っかかりがあるのを感じる。包丁の刃先を曲げることで産まれる引っかかり。昆布をより薄くするこの工夫は職人自らが行う。20分ほど削ると引っかかりがなくなるため、それを目処に研ぎ直さなければならない。こうして生まれた「おぼろ昆布」を大阪名物・うどんと一緒にいただいた。「好きなだけ入れてください」とおぼろ昆布を渡されたっぷり乗せたうどんをいただいた鶴太郎さんは「めちゃくちゃ美味い」と言った。昆布を削り終えた後の芯の部分も「白板昆布」としてバッテラ寿司などに重宝されている。昆布が乗ることで感想を防ぐとともにその甘味がサバに染み出して口当たりをまろやかにする。