去年1月、埼玉県に住んでいた71歳の母親をすい臓がんで亡くした女性は火葬までの残された時間は長年住み慣れた自宅で一緒に過ごしたいと思っていた。しかし、葬儀会社から火葬まで6日またなくてはいけないため遺体安置所の保冷庫に移すことを提案され、女性はやりきれなかったと語っていた。首都圏各地の「火葬待ち」の日数を取材したところ1週間以上になるケースが相次いでいることがわかった。火葬待ちを少しでも解消するために、慣習にとらわれない葬式を行うところも出てきている。東京・品川区にある火葬場が去年12月から始めたのが、午後7時に火葬ができる「夕刻葬」。一方、千葉市の火葬場では、「友引」の日の火葬を行うようになった。友引に葬式を行うと、亡くなった人が参列した友人を引き連れてしまうなどという考え方があり避けられてきた。多死社会を迎えるなか、通夜や告別式などの儀式を行わない簡素化した葬式を選ぶ人が増えている。千葉県柏市の老人ホームで、認知症の妻と暮らす80代の男性は身元保証を委託した福祉事業所と、葬儀などを代行してもらう生前契約を結んだ。希望は火葬のみで、兄弟にも先立たれた男性は、疎遠になっている親族にも迷惑をかけたくないと考えていた。民間企業が遺族を対象に行った全国調査によると、こうした通夜や告別式などを行わない「直葬」や「火葬式」、それに「一日葬」と呼ばれる告別式のみの葬式は、この4年で2倍に増えている。葬儀事情に詳しいシニア生活文化研究所の小谷みどりさんは「大切なのは、葬式の大小よりも『最期の時間を故人とどう過ごしたいか』という、残された遺族の思いや価値観。いざ大切な人の死に直面すると、冷静でいられない人がほとんど。まず、どんな選択肢があるのか、どんなことができるのか、知っておいてほしい。」と話していた。
