1991年、薬師寺では失われた建物の再建の工事が行われていた。棟梁を務めるのは鬼を言われた宮大工・西岡常一。西岡は焼失した金堂や西塔を蘇らせていた。その現場に1人の新入りがやって来た。それが当時29歳の石井浩司だった。石井は岡山で工務店の家に生まれ、仕事よりも矢沢永吉と競馬を愛する自由気ままな男だった。薬師寺の再建工事を勉強してこいと送り込まれたが、半年もしたら帰ろうと考えていた。しかし西岡と出会い、自分の生き方では通用しないと直感した。西岡もとで動く職人はみな一流、西岡が復活させた古代の道具を使いこなす技と哲学をあわせもった集団だった。自分も一流になりたいと岡山に戻ることをやめ修行を続けた。それから10年、亡くなった西岡の仕事を引き継ぎ再建工事の中心を担うようになっていた。しかし「創建当時の工人の心になって仕事をしなさい」という西岡の言葉が心に引っかかっていた。石井はどうしても工人の心が知りたいと東塔の修理の開始を待ち続けた。2012年、ついに東塔の解体修理が始まることになった。国宝修理は1300年前の部材をなるべく残さないといけない。石井は1万3000もの部材1つ1つを確認し補修する役目を担った。部材は腐りボロボロ、屋根を支えていた部分は押しつぶされ歪んでいた。中でも最大の難関は心柱。心柱の頂点には釈迦の遺骨、仏舎利が収められるという。心柱の修理を任されたのが松本全孝だった。心柱は根本から腐りシロアリに食い散らかされ3メートルほどの空洞があった。
住所: 奈良県奈良市西ノ京町457
URL: http://www.nara-yakushiji.com/
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