内弟子大切な仕事に風炉の灰おさえがある。これは内弟子から内弟子へと伝えられ、この灰がおさえられれば茶の手前も一人前と言われる。山の峰をかたどった灰型、利休は自然の景色を風炉の中にまで見ようとした。この灰おさえは修行を積んだ先輩でも数時間かかる、茶人としての修練がここに凝縮され、灰型にその人の風格が表れるという。一度完成してから火箸で崩していく。崩したものかけたものに美しさを感じるのが侘茶の心。この風炉や炉に使う灰は毎年1回必ず番茶をかけて練り直す。大釜で煮詰めた番茶は灰に侘の微妙な色を与え、同時に茶が灰を引き締めるという。使った灰がほんのわずか増えていく貴重なもの。表千家の灰小屋。この灰は利休以来代々同じものを使い続けているという。ひとさじたりとも家元の外へ持ち出すのを禁じられた門外不出の灰。この灰は乳鉢で刷り上げる。白粉のようなきめ細かさ。この音が表千家の夜の音。