- 出演者
- 佐々木明子 真山仁
鉄骨やコンクリートの建物を木造に替えるシンボルとして木造超高層ビルをも実現する技術開発を進める住友林業。大地震でも倒れない耐震性能や耐火性能を備えた新たな木材を開発。花粉症対策にもつながる花粉を出さない無花粉スギを大量培養する研究が進んでいた。世界初木製の人工衛星まで開発した。今週は真山仁が未来を切り開こうとする開拓者に切り込む。
オープニング映像。
住友林業筑波研究所(茨城・つくば市)では建物に使う木材の研究や開発が日々行われている。長年、技術開発をリードしてきた住友林業筑波研究所技師長・中嶋一郎参事は木のエキスパート。木の可能性を引き出し未来を切り拓く新たな取り組み。筑波研究所・苅谷健司マネージャーは宇宙空間での木の限界を追求する道のスペシャリスト。宇宙という極限環境での植物栽培に立ちはだかるのが無重力。地上だけでなく、月や火星ありとあらゆる場所での木の可能性を追求している。世界初の木製の人工衛星は京都大学と約4年間の共同開発。これまで人工衛星に使われてきた金属の代わりに木材を使用している。木材をおよそ10か月間宇宙空間にさらす実験を実施。国際宇宙ステーションに木材を設置した。地上と比べて紫外線が強い宇宙だが、ほとんど劣化は見られなかった。世界初となる木製の人工衛星は木の特徴を最大限に生かしてつくられていた。温度変化が激しい宇宙では木材が伸び縮みするため、くぎなどでつなぎ合わせると衛星が破損する恐れがあり、指物という日本の伝統的な木工技術に着目。金属製の人工衛星は大気圏突入時の燃焼で微粒子を発生し、天候や通信に影響を及ぼす可能性がある。木製の人工衛星は大気圏突入時に燃え尽きるため微粒子を低減。クリーンな宇宙開発につながると期待されている。
別子銅山は住友家が1691年に開坑。過剰な伐採で広範囲にわたり荒廃した森に植林を施し、豊かな森林を取り戻していった。現在全国に所有する社有林は民間3位の約4万8000ヘクタール。日本の森林を守ってきた住友林業の前に今、立ちはだかる大きな壁は林業の衰退。日本の林業従事者はこの40年で年々減少の一途をたどり、現在は4万4000人と3分の1以下に減少(総務省)。更に日本の木材自給率はおよそ43%。半分以上を海外からの輸入に頼っているのが現状。2030年を目標年度にした「ウッドサイクル」という概念がある。木と木材をいかに循環経済に持っていくか。植林し、森林を育て伐採、木材に加工し、木造建築に使用。木を余すことなく使う取り組みとして注目されているのがバイオマス発電。建築現場で出た木くずや住宅の解体現場から出た廃棄される木材を有効活用し、発電を行うというもの。ウッドサイクルを効果的に回すことで社会全体のCO2を削減し林業の活性化につなげたいとしている。中嶋氏は「環境の意識が向上してCO2を吸収する木の能力を分かってもらえたのがありがたい。それを追い風にしながらスピードをどう速めるかが課題。一番大事なのは林業関係者にどう利益を還元するか」などと話した。
木の限界に挑む住友林業。木を活用するだけでなく木をつくり出す最先端の培養技術にも着手している。推定樹齢170年以上の京都・醍醐寺にある豊臣秀吉が愛したとされる太閤しだれ桜は木が弱り始め、途絶えるおそれがあった。相談を受けた住友林業は組織培養というクローン技術でもとの木の遺伝子はそのままに若い苗をつくることに成功。桜だけでなく、さまざまな培養技術の研究開発が行われている。住友林業の組織培養技術を牽引する中川麗美主任研究員。今研究しているのは1つの種からたくさんの種を作るというもの。培養技術が今ある問題の解決の糸口として期待されている。戦後、大量に植えられたスギやヒノキなどの人工林の花粉が引き起こす花粉症は今や国民の4割ほどが発症しているといわれる。住友林業は今年7月、無花粉スギの生産事業化に向け、東京都と協定を結んだ。真山は「自然が大事という説からするとクローンの木ばかりなるのは不自然では」などと質問。中嶋氏は「バランスの問題。多様な樹種を計画的に植えるかが大事。我々の基本は森林経営であり、いかに森を大切にしながら育てるか。」などと話した。
真山が「一番どこに重点を置いているのか」と聞くと中嶋氏は「木という素材を全てどう使うかが住友林業の一番ポイント」などと話した。
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住友林業・中嶋一郎参事のブレイクスルーとは「コップの水が溢れる最後の一滴を注ぐこと」などと話した。
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