- 出演者
- 佐々木明子 真山仁
経済小説「ハゲタカ」をはじめ、さまざまな人間ドラマを描く小説家・真山仁が未来を切り開く開拓者に迫る。日本人の死因でがんに次いで多い心疾患。中でも急増しているのが心不全。心臓を動かす筋肉が死んだり、弱ったりすることが原因で、特効薬はなく心臓を移植する以外に回復の道はないと言われてきた。そんな心不全に今、画期的な治療法が生まれようとしている。正常な心臓の筋肉の細胞を培養し移植する心臓再生医療。すでに臨床試験が始まり、実現は目前に迫っている。
オープニング映像。
本日の開拓者は医療ベンチャーHeartseed社長・慶應大学医学部名誉教授・福田恵一。ハートシードの従業員39人のうち研究員は約30人。心不全とは病気や老化により心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなった状態をいう。多くは細胞が死んでしまうことが原因で根治はできないと言われてきた。誰も成し遂げたことのない新たな心不全の治療に挑む。福田は慶應大学医学部を卒業後、循環器内科の医師として現場で患者と向き合ってきた。心筋細胞の移植を目指す最前線。iPS細胞から心臓の筋肉を人工的につくりだした。1995年、幹細胞から心筋をつくる研究をスタート。失敗の連続の中、京都大学・山中伸弥教授の研究チームが万能細胞といわれるiPS細胞の作製に成功。iPS細胞を使うことで加速度的に進んだ心筋細胞の培養。2年前から実際に人に移植する臨床試験が始まった。心不全と闘い続けている福田はこれまでに3つの大きな壁を打ち破ってきた。心筋細胞の選別。
実用化が迫る心臓再生医療について。福田さんは心臓の筋肉を培養する際に心筋以外の細胞が混ざる問題に対し、心筋細胞だけを選別して生き残らせる技術を開発した。特殊な培養液に数日浸すことで心筋細胞だけが生き残る仕組みになっている。次に心筋細胞が定着しない問題に対しては、約1000個の心筋細胞を集めた「心筋球」を作って心筋細胞の強度を上げる取り組みを行った。福田さんは可能性のある失敗を全部経て今の形に辿り着いたという。そして移植手術の安全性の確保については、特殊な注射針を使って心筋球を注射で心臓に入れる方法を考案した。
福田さんは移植手術での出血を抑えるために特殊な形状の注射針を開発。先端が円錐状になっていて、針の横に穴が空いた作りになっている。丸まった針先で組織を押し広げ、横穴から心筋球を流し込むという。血管を傷つけないので出血は少なく、心筋球の流出もないとのこと。この針の開発を福田さんがお願いしたのが「スズキプレシオン」。医療器具などの精密機械を主力商品とする会社とのこと。鈴木勲副社長は「できるのかと思ったが、自分も不整脈の一種を患っており、心臓が悪い人に必要なのであれば何とかしなければと思った」などと話した。
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