- 出演者
- 佐々木明子 真山仁
オープニング映像。
本日の開拓者は農業ベンチャー「グリーンカラー」の鏑木裕介代表。南アルプスを一望できる平均的なブドウ農家の10倍という広大な農場で4年前に大規模なブドウ栽培を始めた。鏑木さんは三井不動産の社員で、アウトレットモールのテナント営業を経て新規事業を立ち上げる部署に異動した。そこで出会ったブドウ栽培に可能性を感じ、2019年に社内ベンチャーとしてグリーンカラーを立ち上げた。豊富な資金力をバックに利益が出るまでじっくり待つという不動産企業のビジネスモデルがブドウ栽培にマッチしたとのこと。去年9月に販売を開始したシャインマスカットの価格は1房4200円と強気。贈答用など高級品として販売している。ここに至るまでの裏には大企業ならではの積極的な投資があった。スマートフォンで操作できるスプリンクラーや農場に設置された5台のセンサーなどで、品質の向上と作業の効率化につなげている。ブドウ栽培を始めて4年、ようやく軌道に乗ってきたとのこと。鏑木氏は「ブドウの生産工程を予測するシステムを作ろうと思っている。大手企業がバックにいるので、1回は話を皆聞いてくれるのが強み」などと話した。
世界一を目指すグリーンカラーの最大の特徴が日本とニュージーランドでの2拠点栽培。どのような戦略なのか、現地ニュージーランドにいるスタッフに話を聞いた。南半球のニュージーランドは今が冬、日本と真逆の季節を利用する2拠点栽培。日本でブドウのシーズンが終わる頃、ニュージーランドでは始まるため、1年を通してブドウを収穫できる。現在ニュージーランドにいるのは元NTTデータ・高橋望さん、三井不動産・小林慎さん(共同創業者)、元ワイン醸造家・加賀山敬之さんの3人。ニュージーランドでは2021年に数億円をかけて10ヘクタールの農場を取得した。栽培しているのは許可を取った日本ブランドのシャインマスカット系。日本で働いているスタッフも収穫が終わると現地に向かうという。鏑木さんは「果樹は繁忙期と閑散期がはっきりしている。2拠点で通年栽培できれば雇用も安定するし、マーケットを独占して収益も確保できる」などと話した。ニュージーランドで日本のブドウの品質を再現できるかという問いについて現地のスタッフは「ニュージーランドの気候はブドウにはかなり適している。テスト収穫の段階で味にも自信を持っている」などと話した。ニュージーランドでの栽培が4年目を迎える半年後、初の本格的な収穫を迎える。今後は農地を拡大し、日本は50ヘクタール、ニュージーランドは100ヘクタールにする計画とのこと。今後の課題は「日本式のブドウ栽培をいかに大規模化できるのか」で、鏑木さんは「ICT化も重要だが最終的には人の目による判断も必要になる。どこまで省力化するかは次のニュージーランドの生産シーズンから徐々に試していく」などと話した。また鏑木さんはアジア市場への売り込みを狙っているとし、「アジアは果物の贈答用文化があるのでマーケット的に攻めやすい」などと話した。
日本の農業従事者の平均年齢が68歳になり、担い手不足が叫ばれている中、農業ベンチャー「グリーンカラー」は若者をひきつける魅力的な農業を目指している。グリーンカラーの従業員は8人で平均年齢は29歳。2拠点で働けるため、農家の平均所得の5倍以上稼ぐ人もいるという。ブドウ栽培をしながらプロの演奏家としても活動している社員もいる。鏑木さんは「価値観が多様化している今、北と南を行き来してブドウを育てるようなライフスタイルがあってもいい。最初は儲けて世界一を目指す思いが強かったが、今は新しいライフスタイルを提案したいという思いの方が強くなっている」などと話した。
鏑木さんにとってブレイクスルーは「利益を追求しながらも社員が幸せでいること」。鏑木さんは「社員が幸せそうに楽しそうに働いていると、頑張れるし辛いことも乗り越えられる。今の事業を通じて儲けと同じかそれ以上に社会的意義を重要視するようになった」などと話した。
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