- 出演者
- 佐々木明子 真山仁
オープニング映像。
東京大学大学院教授・酒井崇匡さんはゲルの常識を変えた研究者。ゲルは水を多く含む固体のこと。酒井さんは「ゲルは水がいっぱい入っていて面白い材料。これの色々な使い道を研究している」などと話した。酒井さんが作った”伸びるゲル”は、漁網に使うことで海洋プラスチックゴミの削減につながるとしている。医療分野では人の体との親和性が高いことから、出血を止める止血剤として開発が進められている。酒井さんのゲルの秘密は内部構造にある。一般的なゲルの内部構造は不規則でグチャグチャだが、酒井さんが開発した「テトラゲル」は4方向に分かれた十字のような形をした紐がきれいに組み合わさってできている。酒井さんはこれまで不規則だったゲルの分子構造を世界で初めて均一に整えることに成功した。テトラゲルは水と医薬品などにも使われているポリエチレングリコールの2つを混ぜるだけで簡単に作ることができる。さらに配合を変えることで様々な特性を付与できるとのこと。このテトラゲルは特に医療などの分野で活用が期待されているとのこと。
酒井さんは大学3年生の時に東京大学・マテリアル工学科に進み、当時マイナーな存在だったゲルを先輩などにバカにされたことがきっかけで、ゲルをメジャーな材料にすべく研究に没頭。そして鄭先生が見つけたゲル化剤の固まるパターンの中からテトラゲルのヒントと運命的に出会い、そこを突破口にして画期的なゲルの開発に成功したとのこと。
酒井さんは今、糸状のゲルの研究に取り組んでいる。強靭性が特徴で、1.5Lの水を楽々と持ち上げられるほど。ゲルの糸はほとんど水からできているため体との適合性が高く、怪我をしたアスリートの靭帯や腱の代わりとしての活用が期待されている。しかし認知度の低さから企業が中々興味を持ってくれないとのこと。酒井さんは「ゲルを使って生活を豊かにするような商品を開発しないと認めてもらえない。そのためにベンチャー企業を6年前に立ち上げた」などと話した。
坂井教授は、ゲル実用化に向け取り組んでいることは、かつての教え子である増井さんとバイオベンチャー「ジェリクル」を立ち上げ企業にアプローチをかけている。大手医療品メーカーのアース製薬でゲルの魅力をアピール。アース製薬は以前からテトラゲルに注目しゲルを使った新製品の開発を検討しているという。増井さんは、ゲルのポテンシャルが過小評価されいると思っていて、医療に限らず工業・農業まで踏み込んでいって世の中のものを全てゲルで作るなどと考えている。坂井教授は、ゲルで何でもできるとは思っていないという。生活の質に対してコミットできる用途はいっぱいあるなどと述べた。再生医療にライバル感は持っているかと聞かれ、相補的にやるというのもありえて、ゲルを足場にして組織を再生するのは細胞を使ってもできるが、レギュレーションも大変だし時間もお金もかかるということから、ゲルはほぼ水でコストは数桁低くなるという。
坂井さんにとってブレイクスルーとは、ゲルの原理原則を理解するサイエンスも凄く大事だと思っていて、一方でそれを実用化する用途・応用の両方が大事だと思っているという。真山さんは、小説家デビューしたときに「スピルバーグになりなさい」と言われたという。「普段だれも見ない映画をスピルバーグが作ったら見るだと」ということで、「何をやりたいかを後に置きなさい。エンタメとして勝負して面白くなければあなたの言いたいことは誰も読まない」と言われたという。ここまで来てるならあとは知られるだけなので、切り札をもってどこかで突破口を見つけたほうが研究の成果が上がるのではと思ったという。