「賃金・物価の好循環、問われる4つの経路」をテーマに森田さんが解説。日銀の支店長会議が昨日終わり、さくらリポートでは人手不足をどう乗り越えるかという企業の悩みを聞き取ることができた。利益を削ってでも賃上げを続ける必要があるという企業もあれば、安易な賃上げには踏み切れないという声も聞かれた。賃金・物価の好循環は日銀が今後の政策判断をするためにも軸になる重要な概念で、(1)マークアップ(2)支出(需要)(3)労働分配(4)実質賃金の増加の4つの経路からなると考える。『マークアップ』は企業で追加的なコストが生じた際、それに対してどれだけ売値(物価)を上げることができているかという『価格設定行動』。これは賃金から物価に力が伝わる経路。『支出(需要)』は賃金が上がった結果個人消費が増えれば企業は売値(物価)を上げることができ、これも賃金から物価に力が伝わる。『労働分配』は物価から賃金に力が伝わるもので、物価が上がることで労働者に賃上げという形で所得を分配するもの。『実質賃金の増加』は物価に対しての賃金の増加のことで、物価から賃金に力が伝わるもの。この4つは独立したものではなくそれぞれに影響を及ぼしていて、この力が相互に働くことを好循環と呼ぶ。今の段階では(2)と(4)が弱いと言わざるを得ない。今後日銀にとってチェックポイントになるのは(1)と(3)で、(3)は春闘で確認することになる。昨日の日銀の支店長会議に始まり、4月の決定会合に向けての重要なイベントは大きく分けて3つ。3月中旬あたりの春闘の回答・回答集計で賃上げを確認し、4月1・2日の3月調査の日銀短観で値上げを確認、4月の支店長会議で地域経済の値上げ・賃上げを確認する。その後の金融政策決定会合でマイナス付利とYCCの撤廃を野村証券では予想している、と森田さんは話した。