ピクテジャパンシニアフェロー・市川眞一の解説。私が心配しているのは、世界の地政学的リスクが高まるのではないかということ。1929年秋に、アメリカで株価の大暴落が始まり、その中でアメリカ経済が失速するのを抑制するために連邦議会がスムートホーリー法という法律を通して、それによって関税を大幅に引き上げた。この結果世界で関税の引き上げ合戦が起こり、そのことが世界経済は急速に悪化させたそういう経験がある。その後の影響については一番苦しい状況にあったのは第1次世界大戦に敗戦しベルサイユ条約で非常に厳しい戦時賠償を負っていたドイツだが、この通商戦争はドイツを直撃しドイツはスタグフレーションになってしまう。その中で1933年にアドルフヒトラーが政権を取ってそこからドイツは第二次世界大戦に一直線にまっしぐらに行った。そうした経験が我々にあるということは、やはりしっかり考えておくべきだと思う。1947年、国連は関税及び貿易に関する一般協定(GATT)を作った。日本政府は当然アメリカと交渉するということも重要だが、それと同時にTPPのような枠組みを使って日本は自由貿易を堅持する、そういう旗をしっかりと掲げていくのが重要。