そうした中でも動物の言葉に関する研究を続ける者はいたが、もうひとつ大きな盲点に気づいていなかったという。1944年にヘイズ夫妻が“ヴィキ”というチンパンジーに6年間かけて人間の言葉を覚えさせようと試みて「パパ」「ママ」「カップ」「アップ」という4つの言葉をなんとか発声できるだけとなっていた。歯の並び方がヒトがアーチ型なのに対しチンパンジーはU字型で口の構造から言葉をしゃべることができないとのこと。次に行われた研究はアメリカの心理学者であるガードナー夫妻が生後10か月のチンパンジーであるワショーを自分たちの家で育てながら手話を教える実験を行い、この研究は類人猿の言語研究として初めて科学誌「SCIENCE」に掲載されていた。ワショーは最終的に250種類の手話を習得したという。さらに研究を進めて類人猿に人間の言葉を覚えされる研究をし、1980年代始めにアメリカの心理学者ランボー夫妻がボノボという大型類人猿の研究を始めた。人間が発した質問に対して、絵文字を指さして意思を伝えるというもの。ボノボのカンジは約500の絵文字を覚えて話し言葉を3,000語も理解した。これは霊長類研究の中で最も会話に近づいた事例とされている。また鈴木俊貴はオウムの仲間のヨウムに英語と意味を教えていく実験をしたことが有名だと話した。こうした研究にはある“落とし穴”があり、人間の生活環境の中で“人間の言葉”を理解できるか?しか研究してこなかったという。