サタデーウオッチ9 会社の未来
今月14日、民間の調査会社(東京商工リサーチ)が去年1年間の企業の倒産件数を発表。11年ぶりに1万件を超えた。倒産の要因はさまざまだが、中でも後継ぎがいない後継者難によるものは462件と過去最多を更新し。こうした事態が進むと雇用だけでなく技術も失われると懸念されている。横浜市青葉区にある電子部品メーカーの社長・北村昭さん、84歳。発振器というマイクや無線、人工衛星などにも使われる部品を製造。部品のサイズは小さいもので5ミリほど。設計から製造まで2人の従業員が長年の経験と熟練の技で、発注元の要望に応じオーダーメードで作り上げる。その技術力が評価され大手電機メーカーをはじめ大学の研究室などからも注文が絶えない。しかし近く、工場が立ちゆかなくなる可能性が。後継者がいない。従業員は60代と80代で経営を引き継ぐのは難しいという。取引先に迷惑をかけないためにもなんとか引き継ぎたい。北村さんは後継者を探す仲介業者に依頼した。これまでに30以上の企業や個人から問い合わせがあったものの、技術の習得が難しいほか、製造に時間がかかり大きな利益が見込めないといった理由などで引き継ぎ先が見つかっていない。北村さんはことし中に後継者が見つからなければ廃業もやむをえないと考えている。
中小企業庁によると、ことし2025年までに70歳を超える経営者は全国で245万人に上り、その半数が後継者が未定とされている。このまま廃業すると650万人の雇用と22兆円のGDP(国内総生産)が失われるとの試算もある。こうした中、ユニークな発想で事業の引き継ぎに成功した企業も。栃木市にある縫製工場。きめ細かい縫製技術でバッグや小物を製造。創業者の佐藤州司さん、74歳。後継ぎに悩む企業が集まるイベントで呼びかけた。工場を引き継いでくれるなら業種にはこだわらないと訴えた。この呼びかけに手を挙げた若林智英さん、33歳。発達障害の生徒などが通う通信制高校の経営者。工場をそのまま受け継いで新たな事業を展開するとともに、生徒の技能習得や就職先確保にもつながるのではないかと考えた。縫製工場の従業員が学校に赴き、生徒に糸切りや検品など必要な技術を指導している。工場の経営は未経験の若林さん。今後数年間は創業者である佐藤さんのサポートを受けながらノウハウを学んでいきたいとしている。佐藤さん「これ(就職先がある)がうちの強み。高等学院側からすると。佐藤縫製との連携によって生まれる」。
企業の後継ぎ探しについては仲介業者だけでなく、国も全国に支援センターを設置するなど後押しをしている。一方で、引き継ぎを巡ってはトラブルも起きている。後継者のいない企業に買収を持ちかけて、現金や株式などの資産を譲渡させたうえで、事業を放置したり借金をそのまま背負わせたりし、売り手側の企業が廃業に追い込まれるケースもあるという。