国際報道 SPOT LIGHT INTERNATIONAL
今年1月の能登半島地震の被災地では、今も多くの人が避難所での生活を余儀なくされている。「災害関連死」も報告されており、避難所の改善が改めて課題となっている。こうしたなか、日本の専門家が避難所の先進地として注目されるのがイタリア。イタリア中部アマトリーチェは、8年前にM6.0の地震で239人が犠牲となった。地震から4日後、テントが設営されて温かい料理まで振る舞われていたという。大規模な訓練があると聞き、会場へ向かった。テントや照明機材など避難所で使われる資材が大量に運び込まれた。この日行われるのは、実際の設備を使った1000人規模の訓練。イタリアでは多くの場合、ボランティア団体が避難所の設置や運営を担う。停電や断水の場合、給水車や発電機を持ち込んで対応している。ここに日本の専門家が注目する仕組みがある。活動するのは訓練を受けた人達で、中には普段の仕事や専門性を生かしたプロもいる。イタリアにはこうしたボランティアが全国に約30万人いるという。移動費など実費を国が負担して、社員が出動した企業には国が金銭的な補助をしている。1980年のイルピニア地震で2700人が犠牲となり、自治体やボランティア団体の統率が取れず救援が遅れた。その反省から、災害対応を担う「市民保護局」を設立し、避難所運営の仕組みを見直した。必要な資材を全国の拠点に備蓄しすぐに持ち出せる状態で保管している。さらに、災害時に消防や軍など各組織が、いつまでになにをするべきか定めたガイドラインがある。ボランティアは、技術を習得して避難者の生活環境を経験する。一際目をひいたのは、食事を作るための設備。ボランティアが700人分の夕食を料理していた。調理用のコンテナを見せてもらうと、オーブンやスライサー・冷蔵庫が備え付けられていた。午後8時、食堂ではスタッフが配膳していた。被災した人たちが長い列に並ばなくて済むように工夫されていた。高齢者や宗教上の理由で食べられない人にも対応しているとのこと。食事のあとは、ボランティアの人たちと一緒のテントで宿泊した。