ニュースウオッチ9 (ニュース)
能登半島地震の発生から、来月1日で1年になる。きょう輪島塗の技術を伝える輪島漆芸技術研修所で8か月遅れの入学式が行われた。地震で被害を受けたが、日常を少しずつ取り戻そうとしている。日本文学研究者・ロバートキャンベルさんは、能登半島に足を運び続けている。これまでも東日本大震災の被災地などで、困難に直面した人たちがどのように立ち直っていくのかを記録してきた。キャンベルさんが能登半島で注目しているのは、地域で大切にされてきた伝統工芸品を作る人たちがどのように立ち直っていくのか。その過程に復興のヒントがあると考えている。これまで20人近くの作家などから話を聞いてきた。キャンベルさんは「あったものが壊れたことがどういうことなのか、日常、作品、表現をどういうふうに紡ぎだし向き合って、力にしていくかをいろんな角度から考察しようとしている」と語った。
日本文学研究者・ロバートキャンベルさんが訪ねたのは、漆芸家・清水康志さん。全国の漆芸家が実力を競う作品展で賞を獲得するなど活躍を続けてきた。しかし元日の地震で、15年以上住み慣れた工房を兼ねた自宅が大きな被害を受けた。作業をしていた部屋も、床が抜けるなど取り壊すしかない状態になった。断水が続く中、近くにある湧き水を頼りに生活を続けた清水さんは、地震の直後は作品作りのことを考えられなかったが、20年近く指導を受けてきた師匠からのことばで心境が変化。キャンベルはその師匠、人間国宝・小森邦衞さんに会いに行った。小森さんも被災していたが、清水さんを「前へ進まなきゃ意味がないだろ。今までやってきたことをなくしてしまうのか」と励ましたという。作品を作り続けることが清水さんにとって必要なことだと考えたという。地震直後の2人の関係に、キャンベルさんは困難な状況から立ち直るために必要なものを見いだした。キャンベルさんは「“共助”。日常的に尋ね合ったり、助け合ったりしていることが未来につながることじゃないかと思う」と語った。清水さんは、師匠に励まされたあと完成させた作品「水滴りて」を紹介。
日本文学研究者・ロバートキャンベルさんが今回の聞き取りで最後に訪れた珠洲焼作家・篠原敬は、地震、豪雨でたび重なる被害を受けたが、仲間と共に作品作りを再開した。助け合いながら1年を過ごしてきた人たち。この先、何が必要になるのか。篠原さんは「希望」ということばを強調した。キャンベルさんは「戻れない去年に代わる新しい生活。明日を迎えるのにどうすればいいかを知子錯誤している人たちがほとんど。輪島、珠洲のことを忘れずに見続ける、関わり続ける、語り続けることが大事」と語った。キャンベルさんは、今後まだものづくりを再開できていない人や輪島市や珠洲市以外の地域の方たちにも、話を聞きに行くことにしている。輪島塗について言及。